大盾使いの少女は実は大盾使いとして優秀だった

 最初にティファの異常さに気付いたのはギルドにいた1人の冒険者だった。


 元々、リッカとティファは色んな意味で注目されていた。リッカは冒険者登録した段階で魔力500000という数値を叩き出し、おまけに真紅の長い髪を靡かせたスタイル抜群の美少女だから目立っても仕方ない。

 そして、そんなリッカの幼馴染であるティファも、茶色の肩ぐらいの長さまで切り揃えた髪の毛で、スタイルは……かなり残念で顔も童顔だが、それ故に可愛らしいと冒険者の間では密かにマスコットガールとして有名だった。


 だが、冒険者としては最初に注目されていたのはリッカの方だった。なんとかリッカを自分のパーティーに勧誘出来ないものかと、リッカを手に入れたガブリィのパーティーがクエストをこなしている映像がギルドで観られるので、全員それを観ながらガブリィを怨めしい目で見ていた。

 が、ふと1人の冒険者がある事に気づく。


「なぁ……あの大盾使いの女の子……確かリッカちゃんの幼馴染のティファちゃんだよな?なんかやたら魔物の攻撃を受けたり、仲間の攻撃も受けてるのに傷一つついてなくね?」


その冒険者の一言で全員がティファに注目した。確かに、先程からオーガやミノタウルスなどの物理攻撃が高い魔物からリンチのように攻撃を浴びせられてるのに、ティファ本人もケロっとしている。おまけに、リッカの魔力500000を誇る魔法に巻き込まれても傷一つついてない。ギルド内にいた冒険者が全員ティファの異常な防御力に気づき、すぐにシンシアにティファの防御力の数値だけ確認させたところ……



ティファ

防御力:∞


 この結果が出た瞬間、ギルドの内にいた冒険者全員が自分の目を疑った。シンシアもこれは何かのミスだと思い再度調べた。だが、10回以上やっても結果は同じだった。

 しかし、納得がいく話でもあった。あれだけ何体もの魔物の攻撃を受け、更にはリッカの魔法を受けても無傷なのだから。なにせ∞である。現時点のリッカの魔力数値900000よりも高い数値なのだから……



「つまり、防御力∞という数値を最初から持っていた。ティファ。あんたは現状どの大盾使いよりも優秀なのさ」


 シャーリィーが言った言葉に、ギルド内にいた冒険者達が全員黙って頷いた。しかし、ティファは突然優秀と言われても信じられず


「でも……私……技とかも覚えてないし……スキルも2つしか……」


冒険者にはスキルという魔法や必殺技のようにMPを使わず特殊な力を使える物がある。職業・冒険者ランク・本人の素養によってスキルを覚えられる量は変わるが、まだ色々な事情があってティファはスキルを2つしか覚えていなかった。


「ちなみにその覚えてる2つのスキルって?」


「えっと……「挑発」と「全状態異常無効」です……」


『いや。もうそのスキルだけで十分優秀だから』


「挑発」は、敵を挑発して攻撃を自分のところへ向けさせるスキル

 「全状態異常無効」は、あらゆる状態異常の攻撃を受けても状態異常にかからないスキルである。


 スキルを覚える方法は2通りあり、一つはスキル書というそのスキルを書き記した書を読む事で覚える方法。もう一つは、戦闘中の何気ないきっかけで覚える方法である。

 ティファは「挑発」はスキル書で覚えた。ガブリィが


「お前は大盾使いなんだから魔物を引きつけるぐらいはしろよ」


と言って、唯一ティファの為に買ってくれた物である。まぁ最もガブリィ的には、ティファに魔物の攻撃を受けさせる為に仕方なく買い与えたのだが……更に、シンシアの調べた結果ティファの「挑発」の熟練度が高く、あらゆる魔物の攻撃を引き寄せやすくなっていた。

そして、「全状態異常無効」はティファが戦闘の際に習得したスキルだ。ティファが攻撃を受けた魔物の中には当然状態異常攻撃をする魔物がいたのだが、ティファの∞の防御力がそれに抵抗したのである。そうして、特に状態異常を回復する事をせずに何度も状態異常攻撃を受け続けた結果、ティファは「全状態異常無効」を獲得したのである。



 防御力は∞。覚えてるスキルは魔物を引き寄せる「挑発」に、状態異常攻撃を無効にする「全状態異常無効」。ティファ1人いれば回復魔法も回復アイテムも必要としない。本人にまだ自覚はないが、ティファはもうすでに歩く防壁と言っても過言ではない存在になっていた。

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