大盾使いの少女は自分のステータスを確認する
唐突にSランク冒険者であるシャーリィーからの誘いを受けてポカンとするティファだが、そんなティファに構わずシャーリィーは続ける。
「うちもそろそろ強力な盾役。タンクが欲しいと思っていたところさね。どうだい?ティファ。うちに来ないか?どうせリッカもすぐに抜けてくるだろうから、その時一緒にうちで2人共面倒みたって構わないよ」
「えっ……!?あの……!?その……!?」
「ちょっと待てや。女狐」
シャーリィーからの勧誘に戸惑いアタフタしていると、そんな2人に割って入ってきたのはマウローだ。マウローはジトっとシャーリィーを軽く睨んだ後、すぐにティファの方を向いた。
「ティファ。俺のパーティーに来い。俺のパーティーはお前を歓迎する」
「えぇ!!?」
「もちろんリッカも一緒で構わん。むしろ大歓迎ってやつだ」
まさかシャーリィーと同じくSランク冒険者であるマウローからの勧誘を受け、アタフタしながらもどうにかティファの言葉を返す。
「あの……!?でも……!?私は2人のパーティーに入れてもらう為のお金は……!?」
『金なんていらない(よ)。これはスカウトだ(よ)』
てっきり2人にお金をと思っていたティファは2人の言葉に目を見開いて驚く。
パーティーに雇い入れてもらう方法に、お金で雇用してもらう以外にも方法がある。それが「スカウト」だ。パーティーのリーダーから勧誘し、相手側もそれを承認すればお金のやり取りなくパーティーに加入する事が出来る。一応、ティファもガブリィのパーティーには「スカウト」の形で加入した。ただ、リッカのおまけのような形ではあったが……
『ちょっと待ったぁぁぁぁ〜ーーーーー!!?』
シャーリィーとマウローがティファを「スカウト」しているのを見た周りの冒険者達が待ったの声をあげた。
「シャーリィーさんやマウローさんはティファちゃんがいなくても十分強いパーティーだろう!だから!ティファちゃん!頼む!俺のパーティーに来てくれ!いや!来てください!!」
「おい!?テメェ!?抜け駆けすんじゃねえよ!?ティファちゃん!俺のパーティーに来てよ!もちろん「スカウト」枠としてさ!」
「野郎ば黙ってなさい!!ティファちゃん!お姉さん達のパーティーにおいで!リッカちゃんも含めて「スカウト」させてもらうからさ!!」
周りにいたパーティーのリーダーらしき人達から次々と「スカウト」を受けてティファはアタフタするが、ガブリィの言葉を思い出して俯きながら言葉を返す。
「あの……皆さんが私の事を同情して言ってくださるのは嬉しいです。けど、リッカは私の事を……それに、私は……戦闘では魔物の攻撃を受けてボケッと立ってるしか出来ない役立たずですし……」
ティファの言葉を受け、周りの冒険者達がキョトンとした顔になり、そして、やれやれと言わんばかりに深い溜息をついた。
「ティファ。確かにあたし達はあんたやリッカを可愛い妹分みたいに思ってる。けど、だからって同情で「スカウト」する程あたし達は人が出来てないよ。それぐらい分かるだろう」
「えっ……それじゃあ……リッカが目当てですか?けど……リッカは……」
「確かにリッカも十分魅力的な逸材だ。だが、それ以上に俺達はお前にパーティーに入ってもらいたいんだ」
ティファはシャーリィーとマウローの言葉を受け、信じられない気持ちでいっぱいになる。毎回ガブリィに役立たずと散々罵倒されていたので、自分が魅力ある逸材とは思えないのだ。
ティファのそんな様子を察したシャーリィーは、再びやれやれと言わんばかりに深い溜息をつく。
「こりゃダメだ。シンシア。すぐにティファのステータス表を持ってきな」
「もう持ってきましたよ。はい。ティファちゃん。これがティファちゃんのステータスよ」
シンシアがそう言って笑顔で手渡してきたのはティファのステータスが書かれた紙だった。冒険者ギルドでは、それぞれの冒険者達のステータスを確認出来る。それは本人はもちろん、パーティーのリーダーも気になった人物を「スカウト」すべきか確認の為、一部ステータスの数値を確認出来る。
ティファはそんな自分のステータスが書かれた紙を恐る恐る確認した。
ティファ
職業:大盾使い
HP:1500
MP:50
まずティファの目に飛び込んできたのは、ティファの体力を表したHPと、魔法や技を使うために必要なポイントのMP。
この数値を見たティファは思わず落胆する。一応大盾使いはあまり魔法や技も使わないのでMPは少なくても問題ないのだが、HPが本来大盾使いならもっとあってもいいはずなのにかなり少なかった。この数値では、HPが1番低いとされる職業の魔術師より少ない可能性がある。
しかし、それよりもかなり厳しい数値が……
攻撃力:0
魔力:0
素早さ:0
攻撃力・魔力・素早さこの3つの数値が全て0なのである。魔法は使う事はないので、魔力が0でも構わないのだが、攻撃力や素早さが0なのら致命的だ。どうりで、ゴブリンを何回攻撃してもダメージは与えられないし、動きも遅い訳だ。なんせその値が0なのだから……
「あのやっぱり私皆さんに「スカウト」される人材じゃ……」
「ティファちゃん。その言葉はティファちゃんの防御力を確認してからにして」
シンシアがニッコリ笑ってそう言うので、ティファは黙って自分の防御力の数値を確認する。流石にティファも防御力にだけは自信があった。ティファはこれまで魔物の攻撃を受けながらもダメージらしいダメージを受けた記憶がないし、リッカからも
「ティファがいれば回復魔法いらずよね。せっかく回復魔術もマスターしたけど無駄に終わりそう……」
と、遠くを見つめながらそんな冗談を言っていたので、きっとそれなりには高いだろうとティファも考えていた。
しかし、ティファの防御力の数値はティファの考えの斜め上をいっていた。
防御力:∞
「はい?」
ティファは自分の防御力に書かれている数値の意味が理解出来なかった。なので、ティファは恐る恐るシンシアに確認をとる。
「あの……シンシアさん……私の防御力の数値これで合ってるんですか?」
「えぇ、もちろん。合ってるわよ」
ニッコリ笑ってそう言い切るシンシアに、しかしティファはやはりこれは間違いだと思いシンシアに尋ねる。
「あの……でも……やっぱりおかしいと思うんです。私の防御力の数値……8が横になってるし……いくらなんでも私の防御力がたった8って事は……」
ティファの言葉にシンシアは思わず苦笑を浮かべて答える。
「私も最初見た時はティファちゃんのように思ったわ。でも、それがティファちゃんの防御力の数値よ。ティファちゃんの防御力は8じゃなく∞《インフィニティ》。つまり、ティファちゃんの防御力数値は無限大なの」
「えっ?」
シンシアの言葉にティファは驚き固まった。
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