スタート

休日の始まり



「コストコに行くわよ!」


「…言いたいだけでしょ」


マサキは大きなバックパックを背負ったハクトウワシと共にバスに揺られていた。

というのも昨日取り付けた約束で、水辺エリアの奥の方の港あたりのコストコに行くのだ。

なんでも職員やフレンズ用に大量の食品を仕入れることができることに目をつけた本社が進出してきたらしい。

にしても何でコストコなのだ。


「コストコっ♪コストコっ♪」


マジで何考えてるのか分からんな…




一方その頃、タクミは唸っていた。


「うーーーーーーーーん…」


フルルへの誕生日プレゼントを探していたのだ。


マコさんに誕生日に貰って嬉しいものを聞いたがウイスキーの銘柄しか言わなかった。

こんな悩むんだったら先に欲しいものを聞いておくべきだったなぁ…


「んんんんんんんんんんんんんんんんん…」


アゴの形が変わりそうなくらいずっと撫でながら考えている。

そうだ、こんな時はこういうのに慣れているヤツに聞くしかない!



「あ?誕生日プレゼントって前々から用意しておくもんだろ…だからお前は卒業できねぇんだよ」


「はぁ…だよなぁ。何かいい案はないか?」


仕方がないので一樹に電話。

侍らせボーイの彼なら何とか出来そうな気がして電話を掛けたのだが…


「んんんんんんんんんんんんんんんんん…」


「やっぱりダメかぁ…」


「いや待て!もうちょっと猶予をくれ!」


電話越しに一樹の唸り声が聞こえる。

女子へのプレゼントは男性陣の永遠の課題である。

女子の可愛いが理解不能なうえに相手がフルルちゃんでかなり特殊である。←失礼


「…かくなる上は…!」


「かくなる上は?」




「でっっっっっっっっデートぉぉっ?!?!」


コンコンと隣の部屋から壁を叩かれた。

相当うるさい声が出てしまったようだ。


「っ、耳がキーンとするぜ…」


でもでもでも別にそんな意味じゃなくてもデートって言うしね…


「温泉とかさ、パークにしかいれないんだったらそれなりに楽しませてやる約束してくりゃいいんじゃねぇの?」


「…そっか、なるほどな、その手があったか」


そうしたら、後でフルルちゃんに行きたいところを聞いて、連れてってあげる約束を取り付ければ良い。


「全くお前はいつまでたっても童貞だから女子への誕生日プレゼントもえらb


煩かったので途中で切りました♨︎




十一ヶ月前、パークはセルリアン大量発生による被害を受けた。

守護けものスザクを先頭に、CARSCカース(Center for Animal ecology Research to Save wildlife from Calamity/野生動物を災害から救うための動物生態学研究センター)から派遣された機動部隊の活躍によって、死者行方不明者共に0名。


「だけど、当日は行方不明者が一人居たんだよなぁ…タクミ先輩」


シンヤは一人、部屋の中でパソコンを開いていた。

画面にはタクミの住所から電話番号まで、個人情報が沢山表示されていた。

右上の動画をクリックする。


ライブステージの近くに取り付けられた防犯カメラの映像だった。

一人だけ周りと違う作業着を着ているのが恐らくタクミだろう。

数秒後、突然閃光が走ってタクミが倒れる。

奥から見覚えのあるフレンズが走って駆けつけ、タクミの胸に蹲って名前を呼ぶ。


「なるほどねぇ…」


彼の手には袋に入った綿棒が握られていた。



シンヤはコンビニへ向かう。

ジャパリマートと銘打ったオレンジと黄色の看板の下に、小太りの男とヒョロっとした紳士が缶コーヒーを手にしている。

シンヤはその二人の前で袋を落とした。


小太りの方がその袋を拾い上げると、二人は林の中に消えて行った。


「流石はお坊っちゃまだな」


「仕事の出来る素晴らしいお方ですなぁ!」


彼らが戻って行ったのは少し大きめのキャンプテントだった。

中には大量の機材が置かれており、その全てに「鹿目コーポレーション」とあるテプラが貼られていた。


「それでは」


紳士が綿棒を取り出して装置に入れる。


「猪俣拓海…データを取らせていただきます」


「そんな仰々しくやる必要あるか?」


小太りの方が柿の種をボリボリと食べながら言う。


「お静かに!それにここでお菓子などを食べたらあぁあぁ機材にカスが落ちるでしょうが!」


「お前もそんなにうるさいとツバが飛んでモニターがぶっ壊れちまうんじゃねぇの?」


雪の積もる林の中に言い争いの声と柿の種のボリボリ音だけが響いている…




「コストコーっ!!Justice!!」


こちら妙にテンションが高いハクトウワシとマサキのコンボ。

普通のスーパーのそれよりも二回りほど大きいカートを押していたはずなのだが、ハクトウワシがパンやらマフィンやら肉やらクマのぬいぐるみやらを入れるのですぐに満杯になってしまった。


「ねぇ、ハクトウワシは何でそんなにコストコが好きなんだ?」


「それは『空は何故青いのか』と同じくらい単純で複雑なquestionね!」


この子悪い子じゃないしすごく美人で可愛いんだけどどっかおかしいよなぁ…


「…というか、こんなに買える金あるか?!」


「Of course、私はコストコならタダで買い物ができるのよ!」


ハクトウワシが自慢げに見せてきたタブレットのコストコのサイトには、ハクトウワシが応援キャラクターとして写真が掲載されていた。


コストコハクトウワシ恐るべし…

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