戦闘!森のセルリアン
ダメでした。
直接フラれたわけでもないのに常に非常にモヤッ。
なんか心臓の上に分銅を乗せられているような気分だ。
切り替えて、切り替えていかなければ。
今日はフルルちゃんがまだ出てきてないので寝ているのではないかと思い、彼女の寝床まで起こしに行くことにした。
二人と一緒にあまりいたくないというのも理由の1つではあったのだが。
「フルルちゃーん…ここら辺のはずなんだけどなぁ…違ったか?」
「タークーミ!」
「わふっ!」
「へんな驚きかた!」とフルルちゃんがころころ笑う。
「今起きてきたの?」
「うん…なんか頭いたくて…栄養失調かな?」
「フルルちゃんにその心配は皆無では…というか難しい言葉をよく知ってるね…」
健康チェック表に頭が痛い、と記入した。
まぁ、季節が変わり始める頃になってきたし気圧の問題だったりだろう。
何しろアニマルガールは頑丈なのだ。
「…で?マコさん…どうだった?」
「え…あぁ…断られたよ…カズキと一緒に遊園地に行くんだってさ」
「そっか…一足おそかったんだね…」
「うん…」
罪悪感が僕の上に更にのしかかる。
「じゃあ火曜日は私と遊ぼうね?」
「ふふっ、ありがとう」
なんでそんなにいい子なんだろうか。
生意気な所もあるし、どっか抜けてる所もある。
でも根は凄く優しい子なんだよね。
「タクミー?今日はどうするの?」
「午後からフルルちゃんはレッスンでしょ?午前中は決まってないから…」
「ラーメン食べたい!」
「絶対ダメ!!」
あー金がねぇ
金もねぇ
財布に諭吉は入ってねぇ
オラこんな状態でラーメンはいやだ
レッドブルの缶が転がって残っていた中身が溢れる。
そんな事にも気がつかず、彼女らはジャパリバスもどき探査車両でパークを爆走していた。
「こんな休みもせずよく飛んでいられるわね…」
「健康状態はどうなんでしょうか…」
「…とりあえず、全快でないことだけは確かね…先ずは彼女と接触して、この行動の目的と健康のチェックをしなければいけないわ」
「肉眼で捉えました。実体356です」
「スザク…」
外からはヒョウ柄のマジックミラー越しに赤い一本の飛行機雲のような線が見える。
スコープが明度を下げながら拡大し、映し出されたのはボロボロの少女だった。
「やっと追いつけそうね…飛ばしてちょうだい」
ヴヴヴンとエンジンが音を立てて更に躍動する。
追いつくのが先か、残りの電池と燃料が無くなるのが先か。
スザクは急降下をはじめ、森の中へと突っ込んでいった。
「チャンスよ!100メートル離して車を降りましょう!」
木々を避けながら着陸地点へと車を進め、武装したガード二人とカコ博士は飛び降りる。
は-1、3番がカコ博士を前と後ろから挟むように警護して進む。
突然、前方から赤い火花と爆音が鳴る。
「カコ博士のレポート569、森林チャンク36にてスザクに接近中。これからインタビューを始める」
ボイスレコーダーを取り出して記録を取り始める。
警備はサンドスター生成の簡易盾を展開し、前に詰めていく。
そこにいたのはすぐにも倒れそうな程に疲弊したスザクだった。
サンドスターの数値はとても低い。
「スザク!大丈夫?!」
「お主…カコ…か…」
経口摂取より早く体に入れる為に、注射器型になっている液体サンドスターを太ももに刺す。
抵抗する気力も無いのか、スザクはもう大人しくしている。
「助けは…いら…うぐ」
「まだ喋らないで、体力を消耗してしまうわ」
スザクの口にサンドスター摂取用の棒状個体を咥えさせたその時だった。
「OOOOOOOGGGGOOOO!!!」
「標的出現!交戦します!」
「きゃあ!」
3メートルはあるであろうセルリアンが突如として出現した。
すかさず盾でガードしながらも、後援のは-1番が対セルリウムコーティングの弾を撃ち込む。
「博士!スザクをおぶって退却してください!」
「分かったわ!」
「これでも喰らえ!このクソッタレスライムが!」
は-3番がセルリアンの下側から爆弾を突っ込んで盾を持ったまま、は-1番と地面に伏せた––
ドカン!と光と共に土がカコ博士の下まで飛んでくる。
は-1番が背後から回ってスザクを引き取り、カコ博士に急ぐよう伝える。
「は-3番は?!どうしたの?!」
「完全にセルリアンを消し飛ばせなかったのでまだ交戦してます!ハンターを呼びました!彼に任せて撤収しましょう!」
は-3番は再生を始めるセルリアンの石をよく狙い、一撃を見舞う。
キラキラした立方体が弾ける。
「まだいやがる…かかって来いよ!死ぬまでお前らの石をファックしてやるぜ!」
同じサイズのセルリアンが二体現れ、その文様を光らせて激しく威嚇を始めた。
「いやごめんて」
サンドスターの塊を掲げながら、は-3番はカコ博士達が逃げた方向と反対に走り始める。
「ごめんごめん!汚い言葉使って悪かったよ!」
近くにいてくれて運が良かった。
四つん這いの少女が高くジャンプする。
空中で綺麗に体をひねり、勢いよく蹴り出すとセルリアンを突き抜けて石を踏み潰した。
続けてもう一体の方に手榴弾を投げ込み、体の半分を吹っ飛ばす。
駆けつけたフレンズは怯むことなく飛び込み、口に石を咥えて戻ると噛み潰した。
「オーダー完了です!」
「サンキュ」
駆けつけたのはリカオンのフレンズ、セルリアンハンターをしている…丁度近くにいてくれて本当に助かった。
グータッチをする。
今度は彼女の笑顔が弾けた。
スザクは安心感か疲労か、バスに乗せられるなり卒倒した。
午前中はフルルちゃんの寝床を整理して終わった。
かなりぐちゃぐちゃになっていたので、A型の僕には少し耐えがたい光景だったが…今ではまだマシになっている。
そしてフルルちゃんを練習部屋に通したのだが…
フルルちゃんは依然と体調不良を訴えていて、脱水じゃないかと思って水も多く取らせたがなかなかよくならない。
明日はセンターまで行ってみてもらった方がいいのではないか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます