気ままにエッセイ

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第1話 過ぎた連想は身を滅ぼす

 最近、少しだけ料理をする。


 料理と言っても刻んでチンして和えるくらいなのだが、レトルトと惣菜だけの食卓よりかは幾分華やかになる。ズボラな私にとってはそれだけの作業でもだいぶ手間に感じてしまうが、手入れのしやすい道具のおかげでなんとかモチベーションを保てている。

 中でも重宝しているのがまな板で、薄っぺらくて値段も安いのだが、そのわりにデザインも機能性も高く、一人暮らしの自分にちょうど良い規模感が気に入っていた。


 しかし先日ふと、このまな板が何かに似ている、既視感があるような気がしてたまらなくなった。何に似ているんだろうとしばらく考えた結果、ベロ──舌にそっくりだという結論にいたった。

 食材が滑らないようザラザラとした加工の施されたオモテ面、接触面との摩擦を高めるためかツルッとした手触りのウラ面。さらにフックに掛けるための穴が端の方に空いており、それがちょうど舌にピアス穴を空けたような格好になっている。


 そのことに気づいて以来、洗いもののたびに舌を洗っているような連想にかられてしてしまい、好きだったまな板が、少しだけ苦手になってしまった。

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