第6話 寝ぼけ
もう、忘れたい。
「……おあよ。」
あ〜……直らないかも。
「あさとくん。」
私の声がほとんど聞こえてないようだ。当然だ。私は蚊のなくような声で元彼の名前を言ってしまっている。
「どうしたの、なほちゃん。」
小走りで寄ってくる。朝が弱い私のためにご飯を作ってくれていた。
「どうしても……無理、思い出しちゃう……。」
黙って私を抱きしめる彼はなにが?とかなにを?とか聞かない。
「あー……なんでもない……。ご飯、食べようね。」
のそのそ起き上がる私の手を彼が頼りなく指先だけを絶妙な握力で掴む。
「なほちゃん……。」
「なあに?」
「どこ行くの?」
「どこも行かないよ?」
「嘘。もう、僕のところにいないよ。」
「なにが?」
「言わせないでよ。」
そのとき初めて私は彼の涙を見た。
私はシワシワのパジャマで力なくでくの棒になったいた。
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