第5話 ただ君という人が
「……っ。なほちゃん。」
地獄の時間が週に1回訪れる。
「なほちゃんそろそろいいっ?」
「んぁっ……いいよお……。」
大して大きくない画面から溢れて、
耳にこだまする君の声。
どうして、手放してしまったのか。
「あっ……きもちっ……。」
「ねえ、こっち向いて、なほちゃん。」
「んんぅ……?」
可愛い。めちゃくちゃ可愛い。
涙目になって顔を真っ赤にしてプルプルの口でこちらを眺める。
「好き……。あさとさん。」
地獄の時間。
俺は週に1回。後悔をしながら画面の画質がブレブレのなほちゃんを見る。
触れたくて、画面に触れる。
それで、プツッと止まる。
再生ボタンを押そうとして、辞める。
「なほちゃん……。」
だいぶ前にもらった手紙が俺の視界に入る。
「君は……、僕といて、幸せだったのか。なあ。」
「次のニュースです。8日午後4時、愛知県名古屋市で事件がありました。事件があったのは……。」
こんな絶対関係ないニュースでも、画面に君が映るんじゃないかなんて馬鹿なこと考えて必死に眺めてるよ。
ーまだ、会えなくなって2ヶ月。
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