第4話 手紙

かつて、私は彼に手紙を書いたことがある。

付き合えて嬉しいとか、これからも一緒にいたいとかそんな若々しいこと。

彼はタバコの煙を手紙に吹き付けながら無言で読んでいた。

可愛い便箋になんてことをするのって言ったけど、その横顔の真剣さに驚いたり……。

「なほちゃん?何見てるの?」

「……最近のレターセットって、結構可愛いし凝ってるんだね。」

「今どき手紙書く人も減ってきたね。」

「……そうだね、それもそう。」

ワンテンポ遅れたレスポンスに何か思うことはあるのだろうか?

上手く言葉が出てこないことを、この人はどう思ってるのかな。

「いつか、僕の姓になったら、手紙の差出人とかも変わるね。」

「山形って?」

「そう、山形なほ。」

「そうだね。」

そういう事実の可能性があるんだ、ということしか今は受け入れられなかった。

笑わなきゃ。

「そうなったらいいね。」

笑いかけて、その顔が君じゃないことに。

「ん!?目が赤いよ、かゆい?」

「んん……ちょっとだけ。」


ちょっとだけ。

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