第3話『福岡の変』

明治10年、ついに博多で士族の反乱が起きた。

福岡城に立て籠もる政府軍を反乱軍が襲撃し、

博多の街は戦火に見舞われた。


火災で焼け出された女郎や舞妓達が逃げ惑う中、

お静は孫四郎と手を取り合って逃げ出した。

用心棒達が二人を逃すまいとして追い回すが、

その行手に弥平が左手に拳銃を抜いて立ちはだかった。


「何でえ弥平、テメエ邪魔するとか」

「五月蝿え、此処は通さんばい」

弥平はそう言って五・六人の用心棒相手に道を塞いだ。

相手も刀を抜いてジリジリと間合いを詰める。


飛びかかってきた一人を撃ち倒し、二人目に銃口を向けるが

後ろから羽交い締めにされ、二発目は宙を撃った。

そのまま懐に飛び込んできた用心棒が短刀で弥平の腹部を刺し貫いた。

倒れた弥平を置き去りにして、用心棒達はまたお静達を追って

西に向かったが、赤坂・鳥飼方面は反乱軍との戦闘が激化しており

砲弾が飛び交う中進むことができず、ついに追跡は断念された。


弥平は道端に倒れたまま、血だまりが広がって行くのを黙って見ていた。

嗚呼、また俺は余計なお節介を焼いてしまった。

こんな馬鹿な奴があるだろうか。こんな事だから小倉は長州に落とされるんだ。

恩着せがましくこんな事をしでかして、お静が聞いたらさぞ嫌気が差すだろう。

嗚呼こんな惨めな醜態を晒して、まだ生きている自分が情けない。

そう思うと、弥平は恥ずかしさに身を焦がし、傍にあったドブに頭を突っ込んだまま生き絶えた。

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