第2話『お静』
悪し
この
その結果各地に
博多の街も例に
「おい弥平、アンタも
「こんなカタワになったけんな。役にも立ちはせんよ」と断った。
不満を言えるような奴らだけで騒げばいいんだ。
そう思いながら、弥平は
店裏の勝手口から入って俵を下ろし、店の女中から茶を出され
一服つけて休んでいると、一人の
「アンタ弥平さんじゃろ、覚えとるかね。お
「へえ、
「覚えとらんかいね。ほら・・・売られてきた日にキャラメルもらった・・」
「さ・・・さあ、何せ売られて泣いた娘さんはごまんとおりましたけん」
そう言って弥平は頭を
弥平は娘たちの顔など覚えてはいなかった。
いや、そもそも娘たちの顔をちゃんと見れるような
まともな男であるはずもなかったのである。
「そうねえ。でも
あん時優しくしてもらったおかげで、博多の街も怖いばかりじゃなかって
思って今日までやってこれましたもん」
「そいつは参りましたばい。お節介も
俺みてえな
良うございましたばい」
始めてまじまじとお静の顔を見た弥平の心は少し
「そいじゃ俺はまた仕事ありますんで。ご馳走さんです」とその場を後にした。
あれから10数年にもなるというのに、逃げた女房に似ているだのと
なんて
しかし、その日から弥平の心の中にお静が住み着いてしまったようだ。
「お前みたいな破落戸が舞妓相手に
そう自分に言い聞かせようとすればするほどに
恋は
脳裏に浮かぶのはお静の笑った顔だった。
何やら大声で叫びたい気持ちをはぐらかすように、
『かんかんのう きうれんす きゅうはきゅうれんす さんしょならえ』
弥平はいつものように鼻歌を歌って
ある時店の連中から、お静には胸に想う若い書生がいる事を聞いた。
何でもお偉方から店に連れてきてもらった
お座敷でお静を一目見てからというもの、お静のマブになったそうだ。
その日から弥平はなるべくお静の店に近づかなくなってしまった。
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