第245話 エルフの姿
「うわぁ……」
「これは……驚きましたわね」
部屋から戻ってきたレイヴェルとアイアルの姿を見たクロエと驚きに目を見開く。
「レイヴェルと……アイアルだよね?」
「あぁそうだよ。ど、どうだ? 一応鏡で自分の姿を見はしたんだけどな」
「ふんっ」
若干恥ずかしそうに頭を掻くレイヴェルと、不機嫌な様子で鼻を鳴らすアイアル。
だが、その姿は紛れもなくエルフそのものだった。
顔立ちこそ変わってはいなかったが、黒髪黒目だったレイヴェルは金髪碧眼となり、耳もエルフらしく尖っていた。ただ肌の色だけは多少白くなっただけで、本物のエルフほどの白さにはならなかった。
アイアルに至ってはエルフ以外の何者でもなかった。金髪碧眼の白磁のような肌。今のアイアルの姿を見てドワーフだと思う人は一人もいないだろう。
「すごい、すごいよレイヴェル! うわぁ、髪とか目の色が変わるだけでこんなに印象変わるんだね! 私、驚いちゃった!」
「えぇわたくしもですわ。変身薬、聞いたことはありましたけど……まさかここまでの代物だとは」
「なんか自分だけど自分じゃないみたいでソワソワするけどな」
「どう? 二人とも体に異常はない?」
「あぁ、俺の方は大丈夫だ。まだ違和感はあるけど、体調の方には問題はないぞ」
「アイアルは?」
「自分が森臭いエルフなんぞの姿になってるせいで胸くそ悪いけどな。それ以外は特に問題はねぇよ」
「そっか。それじゃあ二人とも無事に変身薬が体に合ったんだね。良かった」
「良くねぇよ。アタシ的には全然良くねぇ」
「土臭いドワーフのあなたでも、エルフの姿になれば多少は見れるようになりますわね」
「んだと! 喧嘩売ってんのかてめぇ!」
いつものアイアルとコメットの喧嘩でさえ、エルフの姿だというだけで違って見える。
「とにかくこれでエルフの国に入るってことに関する問題は解決したね。さすがに元からグリモアに住んでましたってことにはできないから、二人は別の場所で暮らしてたエルフ族の兄妹ってことにしようか。それならいけるよね、コメット」
「えぇ、グリモアは他種族を受け入れることはありませんけど、他の場所で暮らしていたエルフならば話は別ですわ。エルフ族の高齢化が進むなかで、他所からのエルフを受け入れるのは国家の存続という意味でも重要ですから」
長命なエルフは、その長命さゆえなのかなかなか子供を作ることができない。だからこそ徐々に子供の数が減り始めていた。そのための施策として他の場所で住んでいるエルフの受け入れを表明したのだ。
「今のお二人を見てエルフではないと疑う方はいないでしょう。こうして知っているわたくしですら、本当にエルフなのではないかと思ってしまうものですもの」
「だよね。二人とも想像以上に完璧な変身だったんだもん。効き目には個人差が出るからちょっと心配してたんだけど。レイヴェルは肌の色以外は大丈夫だし、その肌の色だって許容範囲内だしね」
「えぇ、そうですわね。エルフも日焼けしないわけではありませんし、外にいたエルフならば受け入れられると思いますわ」
「特に完璧なのはアイアルだよ。もうどこからどう見てもエルフ! これ以上ないってほどにエルフ!」
「それクロエは褒めてるつもりかもしれないけど、アタシ的には全然褒め言葉になってないからな。むしろ体に合わない方が嬉しかったくらいだ」
「まぁまぁそう言わずにさ。これで最大の懸念点も解消できた。後はグリモアへ向かうだけだね」
「それはいいけどよ。これ、どれくらいで元に戻るんだよ」
「んー、まぁどれくらい効いてるか次第だけど。まぁでもお試しだから一時間くらいかな?」
「そんなにかかんのかよ!」
そしてそれから変身薬の効果が切れるまでの間、レイヴェルとアイアルのエルフ姿を見てテンションの上がったイルニの遊び相手をさせられるのだった。
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