第207話 コメットの目的
なんとかアイアルとコメットちゃんを落ち着かせて席に着かせたオレ達は、席についてそれぞれの事情について話を聞いていた。
レイヴェルがコメットちゃんを連れてくることになった経緯や、逆にここにアイアルがいる理由もレイヴェル達に話した。
「それじゃあコメットちゃんが来たのはその探し人っていうのが私かもしれないからっていうのでレイヴェルが連れてきたわけね」
「はいそうですわ」
「そんでそっちはアイアルの親父を探す手がかりとしてクロエのところを訪ねて来てたところってわけか」
「あぁ、そうだよ」
「まさかタイミングが重なるなんて思いもしなかったけど。とりあえずそのコメットちゃんが探してるって人のことについて聞かせてくれない?」
「えぇ、もちろんですわ。母様の手記によりますとその方は――」
「ストップ! 待ってくれ。その説明長くなる奴だろ。それよりはさっき書いた絵の方がわかりやすいんじゃないか?」
「そうですの? まぁ、そういうのであれば。こちらが書いた絵になりますわ」
そう言ってコメットちゃんが取り出したのは一枚の肖像画。
「ずいぶん綺麗な絵……って、えっ!?」
書かれていた絵を見て思わず目を見開く。
そこに書かれていたのは間違いなくオレ自身だった。ただ必要以上に美化されているという点を除けば。
「ぎゃはははははっ、なんだよこの絵、クロエのこと美化しすぎだろ!」
アイアルなんかは絵を見た瞬間に大爆笑している。
やばい、普通の絵ならまだしもこれだけ美化されてるともはや別人っていうか、恥ずかしすぎて顔から火が出そうなんだけど!
「な、なにこの絵! 誰が書いたの!」
「わたくしですわ。母様の手記をもとに書いてみましたの。ですが、まだまだでしたわね」
「え?」
「手記の通りに書いたつもりでしたけど、本物はそれ以上でしたわ」
「えっ!?」
「わたくしの画力の無さが恨めしいですわ。もっと絵の練習をしておくべきでした」
こ、この子本気で言ってるし本気で悔やんでるんだけど。この子の目にはオレがどう見えてるんだ?
「え、えっと……とりあえずその絵を見る限り、見る限り……探してるのは私で間違いないと思うんだけど……」
こ、これを自分だって認めるの死ぬほど恥ずかしいんだけど。でもまぁ、この特徴を見る限り間違いなくオレなんだと思う。
「やはりそうですのね!」
ぱぁっと喜色満面の笑みを浮かべるコメットちゃん。
まぁ探してた人がようやく見つかったんだからそりゃ嬉しいだろう。
この絵を見せつけられたオレの心情的な部分は差し置くとして。
そんな時に口を挟んできたのはさっきまで絵を見て爆笑していたライアルだった。
「でもよぉ、おかしくねぇか?」
「なんですのドワーフ。あなたの話など聞いていませんわ」
「うっせぇよ。こっちこそ別にお前にたいして言ってんじゃねぇんだからな」
「はいはい、落ち着いて。それでライアル、何が気になるの?」
「その絵。そこの気にくわねぇエルフの母親のダチなんだろ?」
「そうですわ。ですがそれが何か?」
「まだわかんねぇのかよ。お前頭エルフのくせに頭悪いんじゃねぇのか?」
「な、なんですって!?」
「んだよ。やんのか!」
「だから、いい加減にしなさい」
「「いたっ!」」
睨み合う二人の額にデコピンをする。少しだけ《破壊》の力を込めて。
軽くデコピンをしただけだが、相当痛いはずだ。
「今度喧嘩始めたらもっとキツくいくからね」
いちいち止めるのも面倒だし、多少の武力行使は仕方ないと思ってもらおう。じゃないと話がいっこうに進まないし。
「それでライアルは何が言いたい?」
まぁ、だいたいの察しはついてるんだけどね。
「だから、親父の時も思ったけどよ。クロエが親父やそこのエルフの母親の友人ってならちょっと若すぎるんじゃねぇかって思うんだけどよ」
「確かに……言われてみれば。母様の友人ということであれば、どれだけ若くても三十代かと思っていたのですけど」
「どう見ても若すぎるよな。そこんとこ、どうなんだよ」
「身体的特徴を見る限り長命種、というわけでもなさそうですし。人族……ですわよね?」
いい加減教えろって目でライアルが見てくる。まぁ確かに気になるよなぁ。
オレは不老の存在だからな。そのことを話してもいいんだけど、その前にちゃんと最後の確認しておかないとな。
「ライアル、コメットちゃん。確認したいことがあるんだけどいい?」
「あん、なんだよ」
「なんですの?」
「ライアルのお父さんの名前はアルマ・ロック・ケイブ。コメットちゃんのお母さんの名前はサテラ・ミーティアだよね?」
「あぁ、その通りだけど」
「えぇ、間違いありませんわ」
「じゃあ間違いないね。アルマもサテラも私の友達だよ」
二人が求めてるのはその先の説明。オレが若い姿のままであることだろう。あの二人の子供なら話しても問題ないだろう。
「二人の子供ってことなら信用して話すけど。私、魔剣なの」
「「魔剣?!」」
「話して良かったのか?」
「うん、大丈夫だと思う」
「お前がそういうならいいけど」
「ま、魔剣って……あの魔剣か?」
「あの魔剣ですの?」
「あはは、たぶんその魔剣だと思うよ。驚かせちゃったかな?」
「驚いたっつーか……マジなんだよな?」
「クロエ様の言うことでしたら信じますけれど。それでもさすがに疑いたくなってしまいますわね」
さすがに言葉だけじゃ信じられないか。そりゃそうだって話だけど。
今ならフィーリアちゃんもマリアさんも近くにはいないし、すぐに変身して戻れば大丈夫かな。
「わかった。それじゃあちょっと見てて」
オレは自分の体を剣へと変身させる。
「「っ!?」」
『これで信じてもらえた?』
「あ、あぁ……」
「さすがにその姿を見てしまっては信じざるを得ませんわね」
「なら良かった」
パッと元の姿に戻る。マリアさんは厨房の方だし、フィーリアちゃんもいない。よし、見られてないな。
「それで、私の方も一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな。あ、コメットちゃんの方にね?」
「はい、もちろんですわ。なんでも聞いてくださいまし」
「それじゃあ遠慮なく聞かせてもらうけど。どうしてフィーリアちゃんは私のことを探しにきたの? ライアルはアルマのことを探すためって聞いたけど」
「それは……そうですわね」
「もし俺らがいたら話しにくいって言うなら席外すぞ?」
「いえ、問題ありませんわ。そこの土臭いドワーフはともかく、別に聞かれて困ることでもありませんし。実は、これを届けに来たんですの」
「箱と……手紙?」
「手紙の内容は読んでませんわ。というより、開けれませんでしたから。でも別の紙に書かれていたんですの。簡潔に言えば、その箱と手紙をあなたへ届けるようという趣旨でしたわ」
「どうしてそれをコメットちゃんが? サテラはどうしたの?」
ふとした疑問。でも、コメットちゃんの表情が陰ったのを見てオレは嫌な予感に襲われた。
「母様は……サテラ・ミーティアは亡くなりましたわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます