第96話 無表情系ロリっ子フェティ
久しぶりにロゼに挨拶しに行ったらロリババアからロリっ子を預かりました。
「いや、意味がわからない」
状況を詳しく問い詰めようにも、当の本人……ロゼは用事があるとか言ってさっさと店まで閉めて出て行ったし。
残されたのはこのフェティって子だけ。
この子から詳しく色々聞くしかないか。
チラッとレイヴェルの方を見ると、レイヴェルも同じことを考えていたみたいで小さく頷いている。
「えーと、フェティちゃん、だよね」
「フェティで結構です」
「そっか。じゃあフェティ。あのね、私達よく状況が呑み込めてないんだけど。ロゼから詳しいこと聞いてるかな?」
「詳細状況について。私に事前に伝えられているのは、この後来るであろうクロエ様とレイヴェル様の手伝いをするようにとだけ」
「手伝いって言われてもねぇ。うーん、具体的には何ができるの?」
「隠密行動は全般できます。特に情報収集については厳しく教え込まれたので、お役に立てるかと」
「って言ってもなぁ。こんな小さい子に何か任せるってのは俺としてはちょっと」
「……私では不足ですか?」
「うっ……」
若干悲しそうな顔でフェティが呟く。
やばい。何も悪いことは言ってないはずなのに、すっごい罪悪感が襲って来る。
「どうしようレイヴェル」
「どうするも何も……なぁ」
「……今回の要請が果たせない場合、師匠には破門にすると言われていますが……別に構いません。あなた方が気にすることではないので」
「えぇっ!?」
「破門!?」
気にすることないって、それはさすがに無理があるって。
破門……ロゼってそういうとこで嘘言わないしなぁ。たぶん本当に破門にするつもりなんだろう。
つまりあれか。この子がロゼのいない間にどれだけオレ達の役に立てるかってことなのか。
嘘の報告……は、できないかぁ。
この子も嘘はつけなさそうだし。何よりロゼに嘘はつけない。あいつはそういうことに対する嗅覚が以上に鋭い。
「それでは、私は必要ないとのことですのでこれで——」
「あぁわかったわかった! 必要ないわけじゃないから! どのみち情報収集はしたかったし。ロゼがいないなら誰かに頼まないといけなかったし。フェティがやってくれるっていうならそれに越したことはないもん」
「……では、使っていただけるということですか?」
「使う……使うかぁ。その言い方は私あんまり好きじゃないなぁ」
ロゼ……どんな教育してんだって言いたいけど。
まぁそれはオレが口がはさむことでもない。でもオレに……オレ達に預けたってことはそういうことだ。
オレ達なりの扱いでいかせてもらう。
「フェティは私達の現地協力者。それでどうかな?」
「現地協力者……ですか?」
「うん。そう。私はこの国に来るのが久しぶりだし、レイヴェルは初めて。知人も多いわけじゃないしね。その意味じゃこの広大な国で自力で得られる情報はほとんどないに等しいの。だから、そういう部分をフェティに協力して補ってもらいたい」
「あくまで協力者。対等な関係で行こうぜってことだな。それなら俺達も存分に頼らせてもらえる」
「……その位置づけにどれほどの意味があるのかわかりませんが。あなた方がそれで納得されるのであれば。よろしくお願いします」
「うん、よろしく!」
「よろしくな」
うーん、まだまだ警戒されてるなぁこれは。
ま、その辺はおいおいなんとかしていくしかないか。
「って、そういえばロゼここをしめちゃったけどフェティはどこに住んでるの?」
「ここです」
「ここって……『猫奪屋』?」
「はい。居候させてもらっています」
「それじゃあ今は……閉められちゃったけど」
「……どこか適当な所で野宿でもしようかと思っていたのですが」
「いやいやいや! ダメでしょ!」
「野宿ってお前、本気かよ!」
「はぁ……一応師匠からは一通りのサバイバル術も伝授されているので何も問題はないかと思うのですが」
「問題大有りだから! 全くもうロゼは……どんな教育してんだっての。よし決めた。フェティ、私達がこの国にいる間は一緒にいよう」
「一緒に……ですか?」
「レイヴェルもいいよね? 王城のあの部屋なら十分な広さもあるし。依頼の間一緒に行動しても問題ないでしょ。人手が居た方が助かるのは事実だし」
「まぁそうだな」
「ですが、ご迷惑では?」
「いいのいいの。フェティが嫌だって言うなら考えるけど……」
「嫌……では、ありません。迷惑でないのであれば」
「うんうん! 全然大丈夫だよ!」
「って言っても、俺達も明日からは移動するわけなんだが。それにも連れていくのか?」
「できる限り一緒にいた方がって思ったんだけど。なんか心配だし」
「それについては俺も同意なんだけどなぁ……ま、後でライアさん達にも話して見るか」
「そうだね。ま、文句は言わせないけど」
「あなた方の好意は受け取りました。ですが、そろそろ私に要請を与えて欲しいのですが」
「あー……まぁそっか。それがロゼの目的でもあるわけだし。何もさせないわけにもいかないか」
「だったらクロエがあのローゼリンデさんに聞こうとしてたことをそのまま聞いたらいいんじゃないか?」
「そうしよっか。私がロゼに聞きたかったのって、今この近辺にいそうな危険人物についてなんだけど。もっと直球で言うと、誰が襲ってきそうかって話かな。ロゼなら至宝を襲った連中についてもある程度は調べがついてるんじゃないかと思って」
「クロエ、お前……ちゃんと色々考えてたんだな!」
「レイヴェルその言い方は酷くないかな!? 私だってちゃんと色々考えてるんだから! これでも結構頭良いんだからね!」
「いやぁ、お前に頭良いって言われてもなぁ……なんていうか、信じ切れないっていうか。いや、別に悪いと思ってるわけじゃないんだぞ? ただ……なんていうかなぁ」
「ぐっ……なんて酷い認識。まぁ多少はそういう風に見られてる自覚はあったけど……まさかレイヴェルまでそう思ってたなんて」
「……師匠もおっしゃっていました。クロエという奴はバカじゃないが、致命的にアホな所があると。クロエというのが誰かは知りませんでしたが。あなたのことだったのですね」
「ロゼェエエエエエエッッ!!」
今はここにいないロゼに向けて叫ぶ。
こんな子にいったい何を教えてるんだロゼは! っていうかなんだアホって!
オレのどこがアホだって言うんだ!
「それは間違いだから。訂正しておいて。私、アホじゃないから」
「りょ、了解しました……」
「全くもう……次会った時は覚えててよロゼ。レイヴェルも! 相棒のことなんだからもうちょっと信じてよね!」
「いや別に信じてないわけじゃないんだって。頭が悪いとも思ってないし。ただクロエと頭が良いってのがどうにも結びつかないって言うか。悪い意味じゃないぞ?」
「どう捉えても悪いよ! 全くもう……」
「悪い悪い」
「私も失礼しました。確かにそれらの情報について、師匠ならある程度掴んでいそうですが。私の方には何の情報も与えられていません。おそらくそれも含めての今回の修行なのだと思います。お任せください。今持っている情報も含め、二時間ほどいただければ調べ上げてみせます」
「二時間って、そんな短時間で調べられるの?」
「はい。すでにある程度の目星はつけているので。問題ありません」
「うーん、ちょっと心配だけどロゼが選んだくらいだし。能力的には問題ないんだろうね。わかった。それじゃあそっちは任せようかな。でも、あんまり無茶しちゃダメだからね? 危なそうならすぐに引き上げること。いい?」
「……一応心に留めておきます」
「それじゃあそれまで私とレイヴェルは街の方で色々探索かなぁ。二時間経ったらまたここで集合で」
「了解しました」
「なんか勝手にさくさく話が進んでるけど。まぁいいか。それじゃあフェティ、気をつけてな」
「はい。それでは失礼します」
フェティは軽く頭を下げると、そのまま影に溶けるようにして消えていく。
どういう手段を使ったのかはわからないけど……まぁそれは考えるだけ無駄か。
ロゼの教えたことなんだろうし。
「よし、それじゃあレイヴェル。あらためて街の方に戻ろっか」
「あぁ、それもそうだな」
「大丈夫かなぁフェティ」
「とにかく信じて待つしかないだろ。今はな」
フェティの事を気にしつつ、オレ達も裏路地から大通りへと戻るのだった。
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