第25話 強くなるために必要な才能
城塞都市イージア。巨大な石の壁に囲われたその都市は近づけば近づくほどに威圧感増していく。
門もかなりでかいし……なんか門の大きさ10メートルくらいありそうなんだけど。こんなに大きい必要あるのか?
ドラゴンでも通るのかってくらい大きいなこれ。
過去に一回だけ……何年前だっけ。七十年くらい前だったかな。イージアに来たことあるけど、そん時よりもごつくなってるなぁ。まぁ当たり前だけど。
「やっぱこれすごいよな。俺も初めて見た時は度肝抜かれたよ」
「うん。ここまでのものってそうそう無いもんね。絶対にこの都市を守るーみたいな鉄の意思を感じるよね。まぁ、壁は石でできてるけど。っていうかレイヴェルはこの都市の生まれってわけじゃないんだ。拠点にしてるって言ってたからてっきりこの都市で生まれ育ったのかと思ってた」
「いや、この都市にっていうか、この国に来たこと自体一年前が初めてだよ」
「一年前……私がちょうど王都に来た頃かな」
「俺の故郷はもっと東の方……ってこの話はいいか。とにかく、この都市は冒険者が集まるって聞いてたからな。俺も冒険者になりたくてここに来たんだ」
「あー、それなんか聞いたことあるかも。イージアからは強い冒険者が生まれやすいみたいなジンクスがあるって」
「ジンクスっていうか……実際そうなんだろうな。S級やA級の冒険者を何人も排出してる。ここの冒険者ギルドは訓練施設とかがしっかりしてるからな」
「へぇ、そうなんだ」
正直冒険者についてはあんまり詳しくないんだよなぁ。知ってる冒険者の人は何人かいるけど、あの人達は普通の冒険者って感じじゃないし。
「レイヴェルもS級になりたいの?」
「ん。まぁそりゃなれるならなりたいけど。A級とかS級はなろうと思ってなれるもんじゃないからな。完全に才能の領域だ。俺レベルじゃどんだけ頑張ってもC級か、いけてもB級止まりだろうな」
「そんなことないと思うけど」
「え? なんでだよ」
「だって私がいるから。比類なき最強の力。魔剣少女がね。私がいればS級だって夢じゃないよ」
「確かにそれは……いや、でもなぁ」
レイヴェルの表情に浮かぶのは僅かな葛藤。
うん、まぁなんとなく何を考えてるかはわかる。自分の才能じゃなくて、魔剣の力に頼ってランクを上げてもいいのかって思ってる感じだなあれは。
強すぎる武器に依存した人は本質的な意味で強くなれないって言われることもあるしね。
レイヴェルがそういう性格だったのは純粋に嬉しいけど。
でも、レイヴェルは一つ大きな勘違いをしてる。
「ねぇレイヴェル。この世界において一番強くなるのに大事な才能ってなんだと思う?」
「強くなるのに大事な才能? 魔法とか剣の才能か?」
「それも大事なんだけどね。正解は……魔剣に選ばれる才能」
これは完全に先輩の受け売りになるんだけどな。
いつだったか先輩が言ってたのを覚えてる。
「この世界で強くなろうと思ったら、より大きな強い力を求めるなら。必要なのは魔法の才能でも剣の才能でもない。魔剣に選ばれること。魔剣に選ばれることができれば剣の才能も魔法の才能も凌駕することができる。全てを手にする力を持つことができるってね」
「いやでも、それじゃあ俺が強くなったわけじゃないしな」
「魔剣の力は……私の力はレイヴェルの力だよ。魔法を振るう力を手にすることができる人がいるように、レイヴェルは魔剣を振るう力を手に入れた。魔法や剣は努力すればある程度使えるようになるけど、魔剣はそうじゃない。どれだけ努力しても、魔剣に選ばれる才能が無かったら魔剣使いには慣れない。だからそういう点で言えばレイヴェルは誰よりもすごい才能を持ってるんだよ」
「そう言われるとそうなのかもしれないけどな……でもクロエ。それって遠回しに自分がすごいって自画自賛してないか?」
「もちろん。だって私は誰よりすごい魔剣なんだから。光栄に思ってよねレイヴェル」
「そうだな。そんなクロエに選ばれた俺の才能を光栄に思うことにするよ」
「む、そう来たか」
「でも、だからって俺自身が強くなるための努力をするのを止めるつもりはない。俺が強かったらただでさえ最強なのがもっと最強になるってことだろ」
「確かに。それは言えてるかも。よし、それじゃあ私もレイヴェルが強くなれるように応援してあげる」
「ありがとよ。期待に応えれるよう頑張るよ」
「うむ、頑張りたまえー」
普通の人は魔剣に選ばれたってだけで満足しそうなもんだけど。
いったい何がレイヴェルをそんなに駆り立ててるのか……まだ理由はわかんないなー。直接聞いてもいいけど、変な地雷踏んでも嫌だし。
もうちょっと様子見て、いけると思ったら聞こうかな。
「あ、そういえばさ。今馬車止まってるけど。これって何待ちなの?」
「ん、あぁ。検問だろ。イージアは見ての通り城壁に囲まれた都市だからな。外からの攻撃には強いけど、内側からは弱い。だから検問はいつも厳しめにやってるんだけど……確かに今日はなんか長いな。なんかあったのか?」
話し込んでたから気にもしてなかったけど、もうずいぶん長いこと馬車が止まってる。いくら検問が厳しいからってこんなに時間かかるかな。
疑問に思ったオレとレイヴェルは馬車を降りて御者の人に声をかける。
「すみません、何かあったんですか」
「あぁお客さん。それがねぇ、なんだか先頭の方で何かあったみたいで。騒がしいんですよねぇ」
言われてみれば……なんか言い争ってるみたいな声がする。
くそ、早くイージアに入りたいのに。
「この分じゃもうしばらくかかりそうですねぇ」
「……私ちょっと見てきます」
「おいクロエ、危ないぞ。面倒なことになってたらどうするんだよ」
「大丈夫だって。ちょっと見てくるだけだし。レイヴェルはここで待ってて」
「ホントに見てくるだけなんだな」
「当たり前だって。私一人じゃできることもほとんどないし」
「はぁ、わかった。ホントに変なことするなよ」
「わかってるー!」
渋滞の原因を突き止めるべくオレは先頭へと走る。
すると言ってた通り、何事かを言い争うような声が聞こえてくる。
「だから何度も言ってるでしょ。この子は危険な魔物なんかじゃない! 私の相棒なの!」
「何だ貴様は。竜種を街の中に入れれるわけがないだろう! それとまずはフードを脱げ、怪しい奴め! 身元を証明できないようなやつをイージアの中に入れれるか」
「あぁもう! 話のわからない奴らね。責任者出しなさい責任者!」
あれ、この声どっかで聞いたことある気が……。
声の方に近づいてみると、そこには鎧を着た検問官達と大きな竜に跨ってローブを着た、たぶん……っていうか女の人。声的にそうだと思う。周囲には呼ばれてきたのか武装した兵士達の姿もある
でもあの声にあの綺麗な青色の鱗の竜……もしかして。
「ラミィ?」
「? 今の声……もしかして」
俺の声はそんなに大きくなかったと思う。
でも、ローブの女性は耳聡くオレの声を聞き取ったようで、キョロキョロと周囲を見渡してオレの姿を見つけた。
「クロエ!」
フードを脱ぎ去り、満面の笑みこっちに走り寄って来る少女。
あぁやっぱり間違いなかったみたいだ。
彼女の名はラミィ。オレが昔旅をしている時にできた竜人族の友人だった。
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