第23話 新たな出会い

 二日後、リクトとミソラは目的地である遺跡の付近まで辿り着いていた。


「お兄ちゃん、まだ着かない?」

「ここら辺のはずなんだがな……」


 リクトは辺りを見渡してみるが、それらしいものは見つからない。場所を間違えているのだろうか。

 地図を見て確認すると、確かにこの付近であることは間違いないようだ。


「うーん、もうちょっと探してみよう」

「そうだね」


 リクトたちは更に探し回った。すると、木々をかき分けた奥に小さな泉を見つけた。


「こんなところに泉があったのか」


 開けた場所に出ると、泉に佇んでいる一人の青年の姿が見えた。


「あ……」

「ん?」


 リクトが声を漏らすと、青年はリクトたちの存在に気付いて振り向いた。


「おや、人か。珍しいな、こんなところまで来るなんて」

「ああ、すみません。邪魔しちゃいましたかね」

「いや、そんなことはないぜ」


 青年はリクトに近づく。


「初めまして。俺はカムイ。君の名前は?」

「俺はリクト。こっちが妹のミソラ」

「よ、よろしくお願いします」


 ミソラはぺこりとお辞儀をした。


「よろしく。あ、別に敬語じゃなくていいぞ。そして不躾な質問ですまないが、ここに来た理由は?」

「いや、この近くに遺跡があると聞いてやってきたんだけど、見つからなくて探してたらこの泉を見つけたんだ」

「遺跡を探しにね。なるほどな」


 カムイは考えるような仕草をする。


「どこ出身だ?」

「えーと、商業共和国の山奥にある小さな村だ。村の名前は特にないんだけど」

「……あそこの村か。へえ」


 カムイはリクトをジロジロと見つめる。


「俺の村のことを知っているのか? リングルートで話しても誰も知らないほど無名な村だと思うんだが」

「まあな。それより、遺跡に行きたいんだろ。場所なら俺が知っているから案内してやるよ」

「本当か? やったな、ミソラ」

「うん! カムイさん、ありがとうございます」

「どういたしまして。じゃあ行こうか」


 カムイに連れられ、リクトたちは遺跡へと向かった。




 カムイに連れられながら、リクトは彼を観察していた。

 見た目はずいぶんと若い。たぶんリクトと年はあまり変わらないだろう。髪は長く、腰まで届きそうなほどだ。腰には刀を携えているため、おそらく剣士なのだろう。

 服装は鎧を着ているというわけではなく、動きやすい軽装となっている。武装しているわけではないので、傭兵ではないのかもしれない。


「どうした、ジロジロ見て」

「あ、いや、刀を持っているから、剣士なのかなって」

「ああ。まあ一応これで食っていってるぞ。お前も見たところ斧を持っているが、傭兵なのか?」

「いや、傭兵ってわけじゃないんだけど。まあ色々と事情があってな」


 リクトは言葉を濁した。さすがに今日出会ったばかりの人物に事情を説明するわけにはいかない。


「ふーん、まあいいや。あ、そうだ、よかったら手合わせでもしないか?」


 突然カムイは提案した。


「え? ……まあいいけど、今か?」

「ああ。思い立ったが吉日だ」


 カムイは刀を引き抜いた。


「さあ来いよ。先手はお前からでいいぜ」


 特に刀を構えずに、カムイはリクトに向かい合った。

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