第18話 山賊との戦闘④

「リクトくん!」


 アカネが剣を抜いてリクトを助けようとするが、流石に間に合いそうにない。


(俺はここで死ぬのか……)


 振り下ろされる剣を見ながら、リクトはそんなことを考えていた。

 ラグナやミソラを守るために力を手に入れたのに、山賊程度も倒せずに殺されてしまう。一体何のために戦いを始めたのだろうか。


(山賊程度、か。ちょっと修行して実力をつけた気になって、強くなったと勘違いしていたんだ。だから山賊程度なんて考えで相手を舐めていた)


 死の間際だからか、反省点ばかりが頭に浮かぶ。


(でも、まだ諦めたくない。仮にこのまま死ぬというのなら、最後まであがいてから死にたい……)


 そう心の中で思ったリクトの頭は冴えていた。目の前に振り下ろされる剣が、まるでスローモーションのように見える。


(そうだ。死ぬ気で戦えば、こいつにだって勝てるかもしれない。例えばこんなことだって……)


 剣がリクトの脳天を切り裂く直前、衝撃の出来事が起こった。リクトが振り下ろされる剣に向かってカウンターのように横から拳を叩きつけたのだ。その衝撃で剣はロクスの手元からはじけ飛んだ。


「なっ……」


 その光景に味方を含む誰もが驚愕していた。しかしリクトだけは冷静に斧を握り直し、再びロクスに向かって攻撃を仕掛ける。剣を失い丸腰のロクスは攻撃を受けることはできないので、かわすしかなかった。


(ちっ、やべえな。まずは武器を拾わないと…)


 ロクスは何とか剣を拾おうと隙をうかがうが、リクトは攻撃の手を休めないため、そのタイミングはなかった。


「うおおおお!」


 全力を振り絞るかのように、リクトは思い切り両手で斧を正面のロクスに向かって振るった。しかし攻撃の隙が大きすぎるため、ロクスは軽々と体を右に捻らせてかわした。


「あまい! そんな攻撃が当たってたまるか」

「……まだだ!」


 その回避に対しリクトは、斧から右手を離して左手だけで持ち、強引に左方向へと攻撃の軌道を変えた。


「何!?」


 流石のロクスもその攻撃は想定外だったようで、呆気に取られて攻撃をかわすことはできず、胸に攻撃が当たってしまう。


「ぐっ!!」


 無理に起動を変えたため致命傷とまではいかなかったが、決して傷は浅くはなかった。このダメージでロクスはその場にうずくまってしまう。


(敵がひるんでいる、今だ!)


 リクトはすかさず追撃を繰り出そうとしたが、


「待ってくれ、リクト!」


 突然発せられたラグナの声で静止した。

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