第17話 山賊との戦闘③
「この部屋から激しくぶつかり合う音が聞こえるな」
リクトとアカネは、先ほどから鳴っている轟音を辿ってとある部屋に辿り着いた。
中に入ると、そこには互いにボロボロになって疲れ果てているシュウと山賊の姿があった。
「シュウ、大丈夫か!」
「リクトか。何とか生きてるが、結構疲れたな」
息を切らしながらシュウが答える。
「あいつ、ロクスね。手配書で見たことがあるわ」
「強いのか?」
「ええ、山賊とは思えないほどの実力を持っているとか。シュウもあんなに消耗してるし、油断しない方がいいかも」
リクトはラグナをちらりと見て、
「ラグナ、お前は大丈夫か?」
「あ、ああ。傷は負っているけど深くはないよ」
「そうか」
ラグナの無事を確認した後、ロクスを瞳に捉えて斧を構える。
「シュウも消耗しているみたいだし、俺が相手だ。アカネは手を出すなよ」
「まあ、お手並み拝見ね」
「……ったく、次から次へと対戦相手が変わってくるな。それで、お前は強いのか? 少なくとも、この兄ちゃんくらいはやるんだろうな」
「そいつは戦ってからのお楽しみだ!」
リクトはロクスとの間合いを詰め、斧を振るう。ロクスはその攻撃を受け止めようとしたが、途中で止めて回避した。
攻撃の風圧を肌で感じたロクスは、自分の選択が正解だったことを理解する。
「危ねえ。さっきの攻撃を受け止めてたら死んでたぜ」
「ちっ、さっさと死んどけばよかったものを」
リクトはロクスを睨みつける。
「おいおい、さっきっからやけにあたりが強いな。俺に何か恨みでもあるのか?」
「……5年程前に、商業共和国の辺境の山奥にある村を襲ったことはないか?」
「さあな。村なんざ数えきれないほど襲ってきたし、覚えてねえや」
「そうか。ならもう話すことはない」
リクトは再び攻撃を始める。しかし慣れてきたロクスはリクトの攻撃に合わせてカウンターを仕掛けた。
「ぐっ……」
「まあそう急かすなよ。俺だって疲れているんだからさ。それにしても、なんでそんなことを聞くんだ?」
「知らないのなら、お前には関係ない」
冷徹な声でリクトが返答する。
「もしかして、村人たちの敵討ちってわけか。だが残念だな。仮に俺がお前の村を襲ったとしても、お前の実力じゃ俺は倒せんよ。そこにいる金髪の餓鬼と同レベルの力じゃな」
「実力なんて関係ない。殺した方が勝ちなんだよ」
「だったらさっさと殺してみろや。その拙い技術でな」
リクトはそれからも攻撃を繰り出すが、全てロクスにはかわされるか、カウンターをされてしまう。誰が見ても実力差は明らかだった。
「はあっ、はあっ」
「……諦めが悪いな、お前。もうそろそろ終わりにしてやるよ」
疲れ切ったリクトにロクスが近づく。
「この後そこの姉ちゃんとも戦うのか。連戦は体に来るぜ。こうなるとわかってりゃ応援を呼んだのによ」
「応援だと?」
「ああ。ラゼルド王国の国境沿いに本拠地があるんだが、数や実力は俺たちの比じゃないぜ。もしかしたら、お前の村を襲ったやつがそこにいるかもなあ」
「……なんだと、それは本当か?」
「さあな。どちらにしろ、お前には関係ない話だったな」
そういってロクスは剣を振り下ろした。
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