第15話 山賊との戦闘①
「よし、そろそろ向かうぞ」
日が暮れてきた頃合いを見て、リクトたちは山賊のアジトへと向かった。
場所については、ギルドからの情報で事前に確認済みだ。後は深夜になるまで近くに潜伏し、油断している隙をついて奇襲を仕掛ける手はずとなっている。
アジトに潜入したら、戦法は基本的に敵を誘い込んで倒す方法をとる。数で劣っている場合には、このやり方が一番有効だろう。だが戦場では何が起こるかはわからない。アクシデントが起きてこの戦法がとれなくなってしまったら、臨機応変に対応するしかない。
深夜になるまでは、アジト周辺の様子を探り、増援が来ないかどうかを確認したり、人の出入りがあるかどうかを調べたりすることになっている。
「今のところ、変わった様子はないわね」
潜伏してから二時間、アカネが外の様子を確認しながら呟く。
「こっちも辺りを調べてきたが、人がいる様子はなかったぜ」
見回りに行っていたシュウが戻ってきた。
「なあ、俺たちはいつ攻め込むんだ?」
「アジトから明かりが消えてからだ。奴らが完全に油断している隙を狙った方が奇襲が成功しやすいからな」
「わかった」
「それまでに、緊張をほぐしておけよ。本番で力が出ませんでしたじゃ困るからな」
「言われなくてもわかってるさ」
とは言うものの、リクトとラグナの心臓は今にも飛び出そうなほどになっていた。
これまでの旅でも、敵から仕掛けられて戦うことはあったが、自分たちのタイミングで戦いを仕掛けることは初めてなので、上手く出来るか不安なのだろう。
「やれることをやろう、リクト。何もできなくて殺されてしまったら末代までの恥になるだろうし」
「ああ、そうだな」
二人は何度も深呼吸をし、気分を落ち着かせようと努力した。
明かりが消えたのを確認した見張り役のアカネは、後ろに控えていたリクトたちに合図を出す。
「よし、行くぞ。行動は迅速に行うように」
シュウの一声で、リクトたちは行動を開始した。
まずは、外にいる見張りを倒す。数は三人と少ない。これならば不意を打てばすぐに倒せるだろう。
事前に決めた策では、シュウとアカネで一人ずつ倒し、残りの一人はリクトとラグナで倒すことになっている。アジトの中の敵に気づかれる前に倒さなければならないので、慎重さと正確さが問われる。
敵に見つからないギリギリの位置まで接近した四人は、近くの茂みに隠れて様子をうかがっていた。倒すための策は決まっていて、まずは敵を誘き出す必要があった。人数も少なく、やれることも限られているので、ここは原始的な方法を用いることにした。
まずは茂みに隠れたリクトが大きな物音を出す。何事かと様子を探ろうとする見張りの関心を惹きつけるためだ。
「ん、何の音だ」
そして程よく見張りの一人が茂みに近づいてきたら、予め捕まえておいた野生動物を放つ。こうすることで、単に野生動物が動いてただけだった、という認識にさせ、敵の気を緩めさせることができる。
「何だ、ただの動物か……」
その隙をついて、アカネが素早く敵を切りつける。
「……!」
「あっさり引っかかってくれたわね」
敵は反応することもできずに命を落とす。
アカネが見張りの一人を切りつけた瞬間に、シュウたちは残りの見張りの後ろに回り込む。
「何者だ!」
「さあ、知る必要はないでしょ」
騒ぎに気付いた他の見張りの注意はアカネに向いている。アカネはさらに自分に対して意識を向けさせるために、あえて敵を挑発する。こうすることで、敵がいつの間にか近づいているシュウたちに気づくのが遅れるのだ。
そして気づく頃には時すでに遅し。瞬く間に切りつけられてしまう。
「おらっ!」
シュウが一人片付ける。残ったもう一人は、ラグナとリクトの協力技で仕留める。
まず、ラグナが敵に向かって連撃を放つ。剣速に優れているラグナの攻撃は、敵にダメージを与えることはできなくとも怯ませる効果は充分にあった。
そしてラグナに意識がいっているその背後から、リクトの重い一撃を与える。意識外の攻撃なので、敵は防ぐことも出来ずに攻撃を食らった。
ダメージを与えた後、シュウはすぐに三人の脈を確認する。全て止まっていることを確認したら、
「よし、じゃあ潜入するぞ!」
と指令を出し、アジトへと入り込んだ。
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