第10話 新たな出会い
「おいおい、何だか穏やかじゃない雰囲気だな」
「何かあったの?」
と、そこへ武装した傭兵風の男女二人組が現れる。二人とも黒髪なので、東方大陸の人間だろうか。
「なんだ、お前たちは」
「それはこっちのセリフだ。その鎧、あんたたちシルフ兵だろ? それが何で三人で寄ってたかってボロボロの子どもを追い詰めてるんだ」
「お前たちには関係のないことだ」
「でも、こんな光景を見たらさすがに良心が痛むわね」
「そういうわけだ」
ラグナはそのやりとりを見ていた。もしかしたら、自分たちを助けてくれるのかもしれないという希望を抱いて。
「いい加減にしろ。これ以上関わろうとすると……」
「関わろうとすると、何だ?」
黒髪の男は挑発するような口調で尋ねる。それが火種となったのか、シルフ兵たちはいきなり襲い掛かってきた。
不意打ちのような攻撃だが、男はいともたやすく攻撃を大剣で受け止める。その動きの滑らかさは、まるで攻撃を予期していたかのようだった。
他のシルフ兵たちも後に続き、女の方へと攻撃を仕掛ける。それに対し女は踊るように攻撃をかわし、腰から細剣を抜いて兵士の首元に向かって軽く突攻撃を放つ。すると兵士は首から血を噴き出し、そのまま地面へと倒れた。
ラグナはその光景を、まばたきもせず眺めていた。
(今の攻撃は、首の脈にピンポイントで攻撃をしていた。こんなことは、相当な技術がなければできない。そしてあの男も……)
と、ラグナは男の方へと目線を向ける。
(あっちはあっちで、剣を鈍器のように振り回している。だがその動きも、無駄が一切ない。わかりやすいものではないか、彼も相当な技術を持っているのだろう)
ラグナがそう分析しているうちに、二人はシルフ兵を片付けてしまった。
「何も殺さなくてもよかっただろうに」
「仕方ないでしょ。生かしておいたらまたしつこく追ってきそうだったんだもん」
「まあいいや、過ぎたことだし。それよりも……」
と、男はラグナ達の方へ近づく。
「お前たち、大丈夫だったか」
「あ、ありがとうございます」
「そっちの少年はどうした。意識がないようだが」
「あ、彼は怪我をしていて……」
「ちょっと、大丈夫なの?」
二人はリクトに駆け寄り、状態を確かめる。
「腹を貫かれているのか。結構重症だぞ。ここからだと医者は一番近くても歩いて数時間はかかる街だ。かといってゆっくりしていては危なそうだし、俺が担いで街まで運ぼう」
「じゃあ、僕たちも一緒に……」
「お前たち二人も大分疲れているだろう。こいつ同様顔色が悪いぞ。近くに休憩所があるから、そこで少し休んでから来いよ。護衛としてこいつ置いていくから」
「あ、そうだ。私たちまだ名乗ってなかったわね。私はアカネ。で、こっちがシュウっていうの。あなたたちは?」
「……僕はラグナ。倒れている少年がリクトで、この子がミソラ。リクトの妹だ」
「よ、よろしくお願いします」
ミソラはぺこりと頭を下げた。
ラグナの名前を聞いた途端、シュウとアカネは驚いたような表情を浮かべた。
「……なるほどな。このシルフ兵たちがお前たちを襲っていた理由は何となくわかった。まあそれよりも、今は怪我人を医者へ連れて行くことを優先しよう。じゃあ一足先に行ってるよ。アカネ、後で宿で落ち合うぞ」
「了解」
といってシュウはリクトを担ぎ、街に向かって走っていった。
「さ、あなたたちも疲れたでしょ。ちょっと休みましょうよ。私が見張っているから、寝ちゃっても大丈夫よ」
「……ではお言葉に甘えて……」
そういった後、ラグナとミソラは気絶したように眠りに落ちた。休まずに歩き続けたので疲労が相当たまっていたのだろう。
「……これは、しばらく起きそうにないかな」
アカネは寝落ちた二人を微笑ましく見守る。
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