第6話 西方大陸からの刺客
東方大陸へと向かう船で、二人の男たちが甲板で話している。
「後どれぐらいで着くんだ?」
「三日ほどだな」
「まったく、余計な手を煩わせるな、あの王子様は」
男の一人が愚痴を呟く。
「それにしてもいいのか? クリス様の命令通りにして」
「……あの人は革命だと言っているな。まあ俺たちは従う他ないだろう」
「そうだな。とりあえず今日はゆっくり休もう」
二人は船室に入っていった。
それから三日後、ラグナの従者であるノヴァは完治とはいかないまでも、身体を動かせるほどには回復した。
ラグナに関しては、よほど無理をしない限りは問題ないほど回復したようだ。
「よかったよ、回復して。ノヴァさんも後一日安静にしてたらすっかり良くなるんじゃないか?」
「恐らくな。それまではすまないが、迷惑をかけてしまうことになる」
「気にするなよ」
リクトは当然のことだろ、というニュアンスでノヴァに返答した。
「ところで、ラグナ様はどこにいるのだろうか」
「リコと剣の鍛錬をしているよ。もちろん怪我をしないように訓練用の武器でな。訓練始めて時間も経つし、もうそろそろ帰ってくると思うよ」
「そうか」
ノヴァの様子を見て、リクトは王子と騎士の関係とはこういうものなのか、という感想を抱いた。
「二人が帰ってくる前にご飯用意するから、もう少し待っててくれ」
そういってリクトが食事の準備を始めようとしたとき、鍛錬に出かけていたリコたちが慌てた様子で帰ってきた。
「リクト! ノヴァさんは起きてる!?」
「ああ、起きてるが、どうしたんだ?」
「港にシルフ王国の船が着いたのよ! 恐れてたことが起こるかもしれないわ……」
リコとラグナは重い表情を浮かべている。その様子から、事態は深刻であることがわかる。
「恐れていたことが起きたわね」
「……」
「どうするの、ラグナ様」
「……どうもこうも、この家を出ていくしかない。行くぞノヴァ」
ラグナがノヴァを率いて家を出ようとするが、それをリコが引き留めた。
「待って。このまま外に出れば鉢合わせになる可能性が高い。だから、私がシルフ王国兵を引き付けるから、その隙にリクトたちと逃げて」
「俺も逃げるのか?」
「当然でしょ。こうなることを覚悟であんたは三日前引き留めたんでしょ。あんたが責任もってこの二人をリングルートから連れ出してあげなさいよ」
「この街から出るのはいいんだが、そこからどうすればいいかわからないんだけど」
リクトは10歳のときにこの街に来て以来、碌に外に出たことがない。故に、東方大陸の地理に詳しくないのだ。
「それなら心配ない。ラゼルド王国への道すじなら、僕たちが把握している。とにかくラゼルド王国たどり着ければ、この状況も打開できるだろう」
「それじゃ、ラグナを信じるしかないのか」
「じゃあ、そっちは頼んだわね。ミソラちゃんをしっかり守りなさいよ」
リコはリクトの胸を叩いた。彼女なりの励ましだろう。
「私が奴らを攻撃したら、たぶんリングルートの警備兵も私を捕えに来るはず。その間にあんたたちは警備が薄くなった門から脱出して」
「そんなことをしたら、お前が大変なことになるんじゃ……」
「私のことは大丈夫よ。じゃあ今度こそ行ってくるわね」
そういってリコは家から出て行った。
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