第3話 二人の会話

「ノヴァ、無事か!」


 ラグナは声を荒げながら名前を呼んだ。


「ラグナ様、私は無事です」


 ノヴァと呼ばれた青年は、顔を青ざめながらも返事する。


「まだ顔が青いじゃないか。無理をするな、お前は怪我も重症なんだ。今はゆっくり休め」

「申し訳ございません……」


 ラグナにそう言われたノヴァは、再び横になった。ノヴァの安否がわかり、ほっとするラグナ。リクトはノヴァがまた眠りについたのを見届けてから、ラグナに話しかける。


「ノヴァさんっていうのか。目を覚ましてよかったな」

「ああ」


 ラグナは心底安心した、という表情を浮かべている。


「リクト、僕たちのことについては、ノヴァの体調が良くなってからでもいいかな?」

「ああ、全然構わない。ところでラグナ、君はもう体は大丈夫なのか?」


 不意に、リクトはラグナの体の調子を聞いた。


「ああ。完治とまではいかないけど、普通に動かせるようにはなったよ」


 ラグナは軽く体を動かして見せた。少し痛むのか、まだ動きがぎこちない。


「なら、この街を案内するから、一緒に見て回らないか?」

「え?」

「気分転換にもなるだろうし、リハビリもかねてどうだ?」


 ラグナは少し考えた後、


「じゃあ、お願いしようかな」


  と答えた。


「よし、じゃあ着替えたら呼んでくれ。あ、着替えは俺のやつでいいかな? ラグナのはすべて洗濯中だし、背丈もあまり変わらないから俺のでもサイズは合うと思うけど」

「ああ、かまわないよ」

「よし、じゃあ外で待ってるよ」


 そう言ってリクトは部屋から出て行った。


「……この先僕は、一体どうすればいいのだろう」


 その問いには、誰も答えることはできない。




「よし、じゃあまずどこから行こうか」

「できれば、君が仕事をしている場所に行ってみたいな」

「え、そんなとこでいいの?」

「ああ」


 ラグナたっての希望なので、まずはリクトの仕事場に行くことにした。


「とはいっても、俺の仕事場なんて何もないぞ」

「リクトは、普段はどんな仕事をしているの?」


 ラグナは、リクトの仕事内容に興味を持っているようだ。


「そうだな、俺がよくやっているのは、荷運びの仕事や木こりとか、肉体労働が多いな。肉体労働って、人手が足りないのにやる人がいないから、すぐに職に就くことが出来るんだ。この町に来た当初は、生活するために働き口を選んでられなかったから、人手不足だった肉体労働をやるしかなかったんだ」

「なるほど……」

「この町は貿易都市として有名で、様々な町や国と取引をしている。荷物は毎日大量に送られてくるから、休む暇なんてほとんどないぞ」

「じゃあ、今日仕事を休んでいる場合じゃないんじゃ?」

「まあ気にすんなよ。明日その分働けばいいんだからさ」


 リクトはニッと歯を見せて笑った。


「本当に、君はすごいな。僕には到底できそうにないよ」

「別に、大したことじゃないよ。体力や忍耐力、筋力には自信あるからさ。仕事しているうちにこれらの力が身に着いちまった」

「確かに、男の僕からしても、羨ましい筋肉をしているよ」

「そ、そうかな」


 リクトは少し照れている。


「ああ」

「ま、まあいいや。それより、次はどこ行く?」


 むず痒くなったのか、リクトは話を切り上げて次の行き先を訪ねる。


「それじゃ……」


 ラグナは次の行き先を希望した。

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