第24話 嵐の前後は静か?
「見てみろ」
夜、アヤカはこっそりホーセンの元を訪れていた。ホーセンのキャンプは丘で一番見晴らしの良いところに建っている。
「あれはなんなの?将軍?」
「あれが敵の頭だ。明日、我が落とす獲物である」
指さす先には大きな城が見える。
「結構近くに来たんだ。怪我は大丈夫なの?」
「ああ、問題ない」
「将軍って“彼女”いるの?」
聞き慣れない単語にホーセンは首を傾げ、
「召使いなら、屋敷に多くいるが」
「そうじゃなくて。“好きな人”だよ」
「我は将軍だ。女にうつつを抜かすことはない」
「そっか」
アヤカの顔は少し暗くなったようだった。
-ホーセンが指さした城内
「腕が折れ、て、」
「折れちまったよぉぉぉ」
ボロボロになったトリステンはどうやら腕が折れてしまったらしい。くてんと垂れ下がる腕を涙目で撫でている。
「情けないぞ、トリステン」
やってきたのは白い鎧を纏った青年騎士。
「ガレイン!お前もなめてかかったら、死ぬぞ。あいつは人間じゃねぇ」
「別に僕は“
「レイピアで相殺した衝撃でどうにかな。レイピア挟んでもこのザマだ」
「ふーん」
ガレインと呼ばれた騎士は月の光に剣をかざしながら、
「別に“
端正な顔に不敵な笑みが浮かぶ。
-朝 セレティア側キャンプ
「真ん中を突っ切るのは無理があるか」
「かと言って、東は山があり西には大きな湖。これは難儀ですね」
カタクラとケロルが二人で作戦をねっている。
「ねぇねぇ、ケロちゃん。ここなら行けるんじゃない?」
寝ぼけ眼で歩いてきたモモが指したのは、東の山。カタクラとケロルは思わず、目を丸くした。
「どういうことです?モモさん」
「ケロちゃん、わかんないのぉ?」
そう言って、大きな胸を机に乗っけて身体を安定させると、
「マキナちゃんのジェットで飛べるよ。昨日、帝国のジェットを持ってすれば山なんてひとっ飛びだって言ってたよ」
それを聞いて、ケロルは急いでマキナのキャンプに向かった。マキナは“何事か!”と飛び起き、下着姿のまま作戦会議のキャンプへ向かった。
「わぁお。結構おっきいんだね」
「モモさん、やめて下さい!気にしてるんですから!!」
素早くカタクラはマキナに毛布を渡し、本題へ戻った。
「マキナさん、本当にこの山を通ることは出来ますか?」
(マズいよー。飛び越えられるわけないじゃん)
「えーと」
どぎまぎするマキナを見計らって、ケロルが口を開く。
「別に飛び越えるのではなく、奇襲として山側を進みたいのです」
(助かったぁ)
「なら、出来ますよ」
-数時間後
キャンプの中心に集結する一同。カタクラが作戦を読み上げていく。
「ホーセン将軍とニコテス殿を筆頭に直進部隊とする。敵軍の攻撃が激しくなることが予想される。ゆえにニコテス殿の魔術防御を受けるように」
「アタシも行っちゃダメ?」
アヤカがひょっこり顔を出した。
「それはダメで、」
「我が連れて行こう。構わないな。行くぞ、皆のもの」
ホーセンは皆の静止を振り切り、アヤカを連れて、出陣の準備をしに行ってしまった。
「ケロル殿と帝国からの皆様は山側を進み、合図と共にホーセン将軍たちに合流するかたちでお願いします」
「じゃあ、ワタシはケロちゃんとね」
ケロルはモモを止めようとしたが、彼女の健気なウインクに負けてしまった。
「私、カタクラはここでジュンヌ様と共に指揮をします。ではご武運を!!」
各々出陣していった後のキャンプはとても静かだった。カタクラが平原をひた走るホーセンたちを見ていると、背中側に大きな音が響いた。雷のような光が消えると、そこから一人の姿が、
「こんにちは。ご挨拶に上がりました。ガレインと申します。どうぞ、よろしく」
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