第12話 デビューは派手に!-その4
兵士たちが街の奪還に盛り上がる中、アヤカとモモはジュンヌの元へ向かった。ジュンヌは頭を包帯でグルグル巻きにしていたが、意識はしっかりとしていた。
「ありがとうございます(泣)助かりました。」
「頑張ったのはアンタだよ、アタシたちは手伝いだからさ。」
「そうだよ!ジュンヌちゃんは女の子なんだから、もっと自分を大切にしなくちゃ!」
「そうですね。」
涙でいっぱいなジュンヌを抱きしめる二人。カタクラはその様子を見て、静かに涙した。
「私、実は今回が初陣だったんです。」
「ういじん?」
「“はじめて”ということだ。」
カタクラが口を挟む。
「乙女の会話を覗くのはいけないよ!あれ?カタクラさん泣いてる??」
「いや、泣いてはおらぬ。失礼した。」
モモに気づかれ、カタクラはそそくさと去っていった。ジュンヌはその姿を見て、
「許してあげて下さい。カタクラ将軍は私の育ての親なのです。この話は話すと長くなりますが、良い方ですのは保証しますよ。」
「そうなんだね、ごめん。」
「まぁ、見るからに良いじいさんそうだよな。どこかのエロじじいとは大違いだぜ。」
そんなこんなで談笑をしているうち、ケロルがでろでろになってやってきた。
「準備出来ましたよ、って服着てください!!」
「別に露出したいわけじゃないよ。ただのお着替え中。」
三人が戦いで汚れた洋服から着替え、外に出ると魔術で出来たステージが浮いていた。そこを急いで登る。ジュンヌだけはあんまり状況が読めていなかった。
「何をするのですか?」
「ワタシたちもそのぉ“ういじん”ってやつなの!」
「やっぱり、デビューは派手にやりたいじゃん!!」
そして、アヤカは手をあげるとケロルの魔術が勝利の夜空に炎の花を作りあげていく。あちこちから歓声が上がる。捕虜となった敵兵までも、拍手をするほどだった。
「ジュンヌ、あんたが“ベストオブベスト?”だから。なんて言えば良いんだっけ?“MV”なんとかだよ。」
「そうだよ。ジュンヌちゃんが“MVB”だよ!だからほら、なんか言ってみて!」
勝利に歓喜し盛り上がる兵士たちを見つめてから、ジュンヌは何かを言おうとしたが、裏門の一件と緊張とで声が裏返ってしまった。兵士一同が首を傾げたが、アヤカはにっこり笑って、
「王女さまが“よく頑張ったぞ!野郎ども‼️”だって!」
「バンザーイ‼️」
追うように兵士たちから、ジュンヌコールが起きた。ジュンヌは涙し、二人も少しウルっと来ていた。最後には、ホーセンの愛馬アカウサギが高らかに吠えた。
つづく
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