第2話 嵐のように激しいオトコ-その2
ホーセンの愛馬“アカウサギ”に乗り、山の中をひた走る一行。アカウサギはホーセンが跨っても、人が2、3名は乗れるほどの大きさであった。もちろん、アヤカとモモは女性であり、ケロルも小柄であるため、すんなりと収まっていた。
「すごい〜揺れる〜」
「ホーセン将軍!もう少しゆっくりと」
「どうした、賢者よ。男なら踏ん張ってみせよ」
「いえ、踏ん張るとかではなく、、、うわ!」
揺れでケロルの顔面はモモの胸に叩きつけられる。彼女たちは振り落とされないために、向き合って座り、互いを抱きしめあっている。そして、その間にケロルが入っている。彼女たちにしてみれば、落ちない配慮なのだろうが、女性経験に乏しいケロルにとっては地獄であった。
「おい、モモ!こいつ失神してないか?」
「え?こっちからじゃ、よくわかんなーい。結構楽しいね、アヤカちゃん!!」
「やれやれ笑)」
「着いたぞ。ここだ、事件現場ってのは」
着いたのは小さな村だった。ホーセン将軍は近くにいた老人に事情を聞いている。
「もしもーし。ケロちゃーん。起きてー」
「こりゃ、刺激が強すぎたんかなぁ。鼻血出してやがるし(笑)」
「あれぇ?君は?」
「ん?」
ケロルを突いて起こそうとしていた彼女たちに少年が近づいてきた。少年は目に涙を浮かべて、小刻みに震えている。
「お姉ちゃんたちは助けに来てくれたの?」
「うん、そうだよー」
「じゃあ、じゃあ、、、」
助けに来てくれたことに安堵したのか、何かを言いかけて泣きじゃくってしまった。それは見かねて、アヤカはそっと少年を懐に寄せる。
「よしよし。我慢してたんだよな。とりあえず、わーっと泣いちまえ。そうすりゃ、スッキリするからさ」
「アヤカちゃんって、あやし上手なんだね」
「アタシんち、五人兄弟だから弟の面倒とか見てたしね」
「ねぇねぇ、」
「ん?どうした?」
「僕の妹が連れてかれちゃったの、、」
「そうか。じゃあ、お姉ちゃんたちが取り返して来てあげる」
静かに少年をなだめ、ホーセンの元へ向かう。一方、ホーセンも老人と話終えたとこだった。
「将軍さまー。さらわれた子がいるみたい!」
「そのようだな。お前たちは賢者さまとこの村に残っておれ。危ないからな」
「いや、行くぜ。将軍さま。アタシたち、助けるって約束してるからね」
「そうか、なら乗れ!駆けろ、我が愛馬よ!」
「ヒヒーン!!」
アカウサギは高らかに鳴き、その声は村を超えて、山まで響き渡った。
つづく
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