番外編3
「やっほー清っち、お迎えご苦労さん!」
「やめろ」
「ああん! いけずぅ〜」
教習所へ行くと篠原が俺の腕を取ろうとするが俺は制止する、周りの声がチラホラ聴こえる。
「あれ彼氏かな?」
「てか今拒否ったよ、ひどくない?」
「マジかよ、今度話し掛けてみようかと思ったのに」
篠原を迎えに来た俺を見てそんな声が聴こえてくる。
俺を送迎扱いで呼びやがって、なんか昔とあんまり変わらないぞ。 篠原はパンの配達業務やってみたいと自ら立候補したのだ、自分がやれば大繁盛でしょと…… 弥生も車を運転出来るのだから任せれば? と言ったが行けない時もあるでしょうという事でそうなった。
神崎達も免許を取ろうとは思っているがドタバタしていたしとりあえずそう言う篠原からと。
弥生に行ってもらおうかとも思ったんだけど今日は休みだしそんな時に行かせるのもなんだしな。
「それにしても清っちが来てくれるなんてね! てっきり弥生さんが来てくれるのかと思った」
「俺と弥生をアテにしやがって」
「いいじゃーん! 清っちならお金も掛からないしそんじょそこらの男に頼むより安心だしねぇー」
そんじょそこらってどこのどいつだよ?
「あ、でも〜安心ってのはちょっと微妙かなぁ、そんな事思ってたら清っちに襲われたりして? 妻子持ちなのにいけないんだぁ〜」
「はいはい、安心してもらって結構だ」
「つまんないの〜。 あ、じゃあついでにドライブしてよ?」
「なんだよついでって?」
「麻里にはよくドライブしてあげてたでしょー? 私が免許取ったら清っちのことも乗せてあげるからさ」
まぁいいかと思い車を流す。 最近は弥生と悠人をよく乗せていたがこいつらも乗ってると言えば乗ってる方だ、こんな風に俺をよく呼ぶしな。 付き合う俺も俺で(それでも弥生は特別なんだけど)こいつらと過ごした時間も特別らしい。
「ねぇー、何も変わらないみたいな感じに感じるけど私が免許そのうち清っちは私らの事送ってくれなくなるのかなぁー?」
「いや別に」
「あー!いや別にそんな事ないって言おうとしたでしょー?」
彩奈が戯けて言ってきた。 あー、ネタにされるような事を自ら言おうとするところだった。 てかなんか篠原の奴妙にしんみりしている、泣いてるのか?
「なぁーんてねッ!」
と思ったらそんな事は全然なくあっけらかんとしていた。
「泣いてるのかなって思った? 思ったでしょ? 私って演技上手いから。 麻里も、それとなんだかんだで莉亜も清っちの事今でも大好きでさ、清っちは苦労するねぇ」
「ああまったく…… 物好きだよなあいつら」
だからほんの一瞬だけどこいつらと接していると昔に戻った気がするんだ。
「でもね私にとっても」
「ん?」
「ああ、いやなんでも。 あ! いよいよ来週からだね清っち」
「そうだな、遂にかぁー。 お前らと合流するのは。 まさか一緒に働く事になるなんてあの頃は思ってなかったし」
そう、ようやく俺もこいつらのパン屋で働く目処がついたのだ。
「入って来て早々に潰れたとか勘弁してくれよ?」
「失礼な、私みたいな美人な客引きが居るのに潰れるわけないでしょーが」
「それ神崎に言うとそんな事で商売してるわけじゃないとかあーだこーだうるさそうだから」
「あははッ、言うだろうね。 まぁなんとかなるっしょ! 弥生さんは勿論だけど麻里なんかずっとソワソワして楽しみにしてるし莉亜も柳瀬さんがやっと来てくれるって喜んでたんだから。 え? 私?」
「いや聞いたか?」
「私も嬉しいよ、清っち来るとよく莉亜とコントしてるしさー、麻里もおちょくり甲斐もあるし弥生さんも張り切るし悠人も可愛いし」
「だから聞いてないっての」
「てことで久し振りに全員収まるとこに収まったねって!」
そうだな、いろいろあったけどこうしてまたこいつらと一緒になるとはな。
「あ、ねえねえ、またついでなんだけど昔私らが住んでたところに行ってみようよ? しばらく見てないしさ」
「そぉいやそうだな、行ってみるか」
俺が居なくなったからしばらくの間はこいつらは前のとこに住んでたけど今は互いに別々のアパートだ。
そして車を走らせて前のアパートに着き、車から降りるといろんな思い出が駆け巡った。
この玄関で夜俺と日向ボーッと突っ立ってたな、2人で話をして…… 離れにあるキッチンでは神崎が腕を振るって料理してたな、そんでもって篠原の部屋を通るとドアの隙間から派手な色使いの部屋からこれまた派手な篠原がお帰りって声掛けて……
「あら、柳瀬君に彩奈ちゃん久し振りねぇ」
誰かと思えば大家さんだった。
「久し振りでーす、どうですか調子は?」
「莉亜ちゃん達が居なくなったから寂しくなるわって思ってたしいい加減ボロだから取り壊そうとしたけどね、今部屋満員なの」
「へぇ〜、私達の他にもここ見つけてくる人居たんだねぇ」
「おい失礼だろ」
「うふふ、いいのよ。 おかげでまだ取り壊すことも先になりそうね」
そうして少し眺めて車を走らせた時アパートの方へ向かう女子高生が……
「もしかしてあの子あそこの住人だったりしてね!」
「そうかもな」
もしそうだとしたらあの子もあそこでいろんな思い出を作っていくんだろうか? なんて思いつつその場を後にした。
それから次の周……
「清人少し緊張してる?」
「そんな風に見える?」
「見えるよ、まぁ新しい仕事だもんね。 なんてあの子達だからかな?」
「パパとママみんな一緒ーッ!」
後ろの席から悠人が言った。
「んなわけないだろ、弥生まで俺を揶揄うなよ」
「ふふッ、ごめんねあなた」
新しい職場のドアを開けるともう3人揃っていた。
「柳瀬さん今日からよろしくお願いします! 期待してますよ」
「あたしの方が先に来てるなんて清人夫婦遅過ぎ…… でも清人が来てくれるんだから許す」
「麻里〜、顔のニヤケを隠しきれてないわよ? 遅いから怒ってやるとか言ってたくせに相変わらずだねぇ。 清っち、前と同じで楽しくやろうね!」
ああ、何故か帰って来たんだなと錯覚に陥ったけどそれはこいつらが本当に俺を待っててくれたんだなとわかるから、だからこう呟いてたんだと思う「ただいま」と。
「ただいまって。 ここは職場なんですけど…… でもそう言われて悪い気はしないですね」
神崎が少し呆れたような顔をしたがニコッと笑い「やっぱり柳瀬さんが居るとしっくりきますね」と言った。
「前の職場より活き活きしてるように見えるよ清人、私達4人で清人のこと待ってたんだから頑張らなくちゃね」
「そうだな弥生」
「じゃあ柳瀬さんにはこうですね」
「あたしは清人はそう言うと思ってた」
「はいはい、麻里に勘付かれてるようじゃね、でもまぁ……」
「お帰りなさい」…… 3人はそう言って俺を迎え入れてくれた。
JKばかりのアパートにぶち込まれて迷惑しています。 薔薇の花 @admwtpg
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