最終話
あれから8年が経った。
神崎は兼ねてから計画していたパン屋を立ち上げてそのパン屋は今は人気店となっていた。
「弥生、今日はそっちに寄ってから帰るよ」
「あ、悠人(ゆうと)良かったねー! パパ寄ってくれるって」
「ほんとー!? やったぁ」
俺は結婚して先輩との4歳になったばかりの子供の悠人が居る。 あいつらと住んでいるところは違くなったが先輩や俺はその後もあいつらと関わりがありよく顔を出していた。
神崎のパン屋がオープンした時神崎の父さんが来てお祝いしていた事にはビックリしたけど変われば変わるもんだ。 一体神崎のおじいちゃんにどんな事されたのやら……
そのパン屋ではなんと日向、篠原も働いていた。 美人な従業員が4人も居るという事でその点でも人気なパン屋だ。 そしてもう1人は結婚して寿退社した先輩だ。 なぜ関わりがあるのかは先輩が神崎達のパン屋で働く事になったからだ。
俺と先輩の子供の面倒も神崎達の計らいで見てもらっているから至れり尽くせりで頭が上がらない。
仕事が終わり神崎のパン屋へ行くと日向が俺に気付いて俺の方へ来た。
「あ、清人いらっしゃい、奥で待ってて。 何か食べる?」
「うーん、じゃあ何かオススメのパンがあれば」
「いいよ、じゃあ待ってて」
「あー! また清っちにタダでパン恵んじゃってるよ麻里ったら」
横から篠原の声が聞こえた。 篠原の方をみるとその背中で寝ている悠人も居た。
「篠原お疲れ。 邪魔してるよ」
「彩、静かにしたら? 悠人起きちゃうよ?」
「あ、そうだった。 悠人ったら私にメロメロになっちゃってさ、私がママになっちゃおうかなぁ」
「ただ単に彩の見た目が派手だからでしょ、まったく」
「へぇー、ちょっとジェラシー? 麻里」
「墨かけられたい? そのうるさい頭に」
「おいおい、こんなとこで喧嘩するなよ、それこそ悠人起きちゃうだろ?」
この2人は相変わらずこんな感じだ、こういうとこは変わらないな。
「2人がうるさいと思ったら来てたんですね柳瀬さん」
「ああ、いつも世話になってるな神崎」
「何か食べて行きます?」
「それもうあたしが言った」
「では悠人君の面倒は彩奈に任せるとして今日はもう閉店なので奥に行ってて下さい」
「じゃあ行ってて清人、弥生さんも居るから」
「ああ」
店の休憩所へ行くと先輩が今日の売り上げを計算していた。
「おかえり清人」
「ただいま。 家じゃないけどな」
「ふふッ、そうだけどね。 いつも清人がここに来ると家みたいにくつろいでいるから」
「あー、あの3人居ると前に住んでたとこみたく感じるからかな。 弥生も悠人もここに居るしさ」
「ほんとあの子達のお世話になっちゃってるよね、悠人もあの子達にすっかり懐いちゃってるしね。 そういえばゆいちゃん元気?」
「しっかり弥生の後継いでるよ。 あいつ真面目にやりゃ結構出来るみたいだしさ」
「ね、言った通りでしょ?」
「それと後で如月もここに顔出しに行くからよろしくって」
「そっかそっか、久しぶりだから楽しみだなぁ」
すると休憩所のドアが開いて神崎と日向が入ってきた。
「清人待ってきたよ、弥生さんの分もあるから食べなよ」
「あ、私の分までありがとね麻里ちゃん」
「弥生さんが来てくれてから大助かりですからね、麻里や彩奈も随分と助けてもらってます」
「あはは、悠人の面倒見てもらってるからどっちかっていうとこっちが助かってるよ」
「そうそう、だからありがたくいただいてね」
「はい、ありがたくいただきます麻里ちゃん」
先輩と日向は、最初こそ日向が先輩に対して一方的に少し敵対心というか恋仇的なあれがあったようだけど今では結構仲が良い。
「美味しい? それあたしが作ったんだよ?」
「そっか、日向が作ったのか」
「麻里ったら柳瀬さんが来るって聞いてそれ食べてもらおうとして気合入れて作ってたんですよ? いたッ!」
「余計な事言わなくていい」
「せっかく麻里が一生懸命作ったんですから伝えようとしたのに。 あーん……」
「清人もこっちで働きなよ。 あたし大歓迎だよ?」
「柳瀬さんが来るなら私も大歓迎です、そうなればいいなとずっと昔から思っておりましたから」
「お給料も心配なしだからオススメだよ! ほうらパパが帰ってきたよ〜!」
「パパーッ!」
篠原も来て目を覚ました悠人が俺に駆け寄ってきた。
そうだな、今すぐにとはいかないけど俺も神崎達のパン屋で将来働きたいな。 悠人もここが好きなようだし何より先輩と神崎、日向、篠原の3人もここに居る。
「清人」
「清っち」
「柳瀬さん」
まぁこいつらと一緒になったらまた騒がしくなりそうだけどそれが俺今の目標にもなっている。
fin
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