第144話


「日向どっか寄る?」

「じゃあコンビニ」

「わかった」



神崎達に俺の気持ちを告げた後、日向と一緒に車に乗っていた。 なんとなく店側から気持ち遠目の場所に停めた。



「着いたぞ」

「うん」



「うん」と言っているが動く気配がないので俺が行けばついてくるかなと思いシートベルトを外して出ようとすると日向に襟元を引っ張られ戻された。



「ゲホッゲホッ! もうちょっとソフトに掴んでくれよ」

「ごめん、別にコンビニに行きたかったわけじゃないんだ、ただこうして清人と2人で居るのが好きなだけ」

「まぁお前はわけわかんない奴だっけど俺も日向と2人で居る時は……」

「居る時は?」

「お前が何考えてるのかを考えるので忙しかったな」

「ぷくくッ…… 何それ?」

「お前いきなりなとこあるからな。 目の前で車停めろとかよくあるしな」

「ああ、そうだね」



って自覚あんのかよ!? だったら危ないからやめてくれよな。



「それは清人の困ってる顔見たくて……」

「へ?」

「あたし…… いろんな清人が好き、あたしがそんな事してヒヤッとしてる清人も好きで」

「お前な……」

「あたし想いを伝えるのが苦手で最初はそんな風で。 ムッとしたりもしかして嫌ってるんじゃないかなって思われるような事も言ったけどあたしなりに頑張ろうって思ってたからで。 でも清人はそんなあたしでもしっかり向き合ってくれて。 だから好き」

「でも俺以外だってお前の事見てやれる奴だって居たんだぞ?」

「うん…… でもあたしが最初に好きになったのは清人だから。 清人は特別、今でもだよ?」



日向はニッコリと笑って車を出た。 どうやらコンビニのへ行く気になったらしい。



「フォンダンショコラとフライドポテトとスパイシーチキンとチョコソフトと……」

「どんだけ食うんだよ!?」

「お腹いっぱいにしとく」



やたらとホットスナックばかり買い込んだ日向は車に戻った。



「お腹いっぱい…… あと食べて」

「だから言わんこっちゃないまったく」

「お腹もいっぱいだし胸もいっぱい」



日向が中途半端に手を付けて残していたのを食べているとじんわりとした日向の視線を感じた。



「あたしの事1番好きだってハッキリ言ってくれて嬉しかった」

「そりゃ日向は不器用だって分真っ直ぐだったっていうか…… なんか俺の言ってる事めちゃくちゃ恥ずかしいな」

「そんな事ないよ。 清人だもん」

「…… お前らの中で誰が1番とかそんなのないしそんな安易な事決められないって思ってたけど俺の中では日向が1番好きだったよ。 だからごめん」

「うん…… あたしも清人の事好きだからわかる。 清人が本当に好きな人はあの人だって」



そう…… だから日向の気持ちには応えられない、俺みたいな奴を好きになってくれて嬉しい、けど俺は……



「俺の…… 俺の好きな人は先輩だ。 日向ごめん」

「言わなくてもわかってる、わかってるけど言ってくれてありがとう」



日向は俺の服をギュッと掴んで顔を埋めた。



こんな時…… 下手に優しくしないで日向を突き放してもう行くぞって言うのが正解なのかもわからない、優しく接したら日向を迷わせるだけかもしれないって事にもなるかもしれない。



でも俺にはどうしても日向を突き放すなんて出来ない。 俺はそっと日向の頭を撫でた。 突き放すだけが最善じゃない、そもそもこんな事に最善なんかないと思う。 



今まで一緒に居たんだ、日向は俺が先輩の事を好きだって事に気付いたんだ。 わかってくれるよな? 本当にごめん。



少しの間日向を撫でていると俺の肩に顔を埋めている日向は顔を上げた。 



そんな日向に話し掛けようとしたらキスをされていた。 俺が唖然としていて目をパチクリさせていると日向は唇を離した。



「ごめん、清人の惚気聞いてたら意地悪したくなっちゃった」

「意地悪って……」

「あたし清人を好きになって良かったよ。 だから最後まで諦めるつもりないから。 あたしの方が好きって清人に言われる自分になれるように頑張る…… つもり。 そんな可能性は低いけど自分にとっても無駄じゃないって思うの」



日向はそう言うと車のドアを開けた。



「え? 日向?」

「帰るね。 あたしの話聞いてくれてありがとう、清人はあの人のとこに行きたいでしょ?」

「いやでも…… 送ってくよ」

「いい、莉亜と彩も待ってると思うし」



日向は車から出てドアを閉めた。 そのまま行ってしまうのかと思ったら日向は窓をコンコンと叩いた。



「あ、ひとつ言い忘れてた。 てか言いたくなかったけど…… 頑張ってねバカ清人、先に帰ってみんなで待ってるから」

「あ…… ああ。 ありがとな日向」



今度こそ帰っていく日向の後ろ姿が見えなくなるまで見ていた。



もう後には引けないな…… 俺は先輩に電話を掛けて呼び出した、いきなりの事なのでもしかしたら会えないかもと思ったが先輩は出て行くから少し待っててと待ち合わせに前に先輩に好きだと告げて先輩に好きと言われたカフェの前でとの事になった。



またここで先輩に告白する事になるとは…… 前に告白した時よりも緊張してきた。


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