第143話


「んーッ! なんかモヤモヤが吹っ飛んでスッキリしたねぇーッ」

「本当です、私なんか昨日なかなか寝つけませんでした」

「良かったね2人とも」

「あんた何他人事みたいに言ってんのよ? あんたのせいでしょうが」

「清人も言ってたじゃん。 結果オーライだって、それにあたし頑張った」

「そうだな、日向もみんな頑張ったよ」



入試の結果を見に行った日の夜、今日はお祝いとして3人が腕を振るってご馳走になった。



「ご馳走様! なんか作り過ぎちゃったね」

「明日もこれだね、美味しかったからいいけど」

「明日くらい手抜きしたって罰は当たりません。 またこれからも私達一緒ですね、麻里、彩奈、柳瀬さん」

「ああ、ついこの間はガキンチョだと思ってたのにな」

「お? 今は私らの事大人の女として見てるのかな清っちは」

「調子乗んな、まだ未成年だろお前ら」

「別にいいよ清人と一緒に居れるんだし」



日向はクールそうに今まで気取ってたが受かった事が嬉しいってのがもう顔に出ている。



日向の手が座っている俺の太ももに触れたと思ったら胸に頭を預けてきた。



「麻里! 私達の目の前で何をいきなり」

「ほんとー! 清っちの隣だからってあんただけ好き放題してんじゃないわよ」

「いいんだもん、あたし頑張った。 もっと褒めて清人」

「い、いや、別に褒めてもいいけど目の前見ろよ」



篠原に強引に引き離され今度は篠原が俺の目の前に来て強引に跨ってきた。



「私も褒めてくれるんだよね?」

「う…… あ、ああ」



篠原、お前相変わらずめっちゃ近いんだけど…… つーか褒めるって何すればいいんだよ? 昼間いろいろ褒めたような気もするけど。



篠原の顔が迫ってくるのでまさかキスする気か!? と思ったら篠原の頭が急にグイッと下がった。



「彩、いい加減にして」

「いたたたッ! 髪引っ張るなっつーの!!」

「そ、そうです麻里! 彩奈を引き離して下さいッ」

「うあッ」



篠原が退かされた拍子にコップのジュースが上着に掛かってしまった。



「あ〜、こりゃ洗濯しねぇと」

「はぁ、仕方ないですね2人とも。 柳瀬さん、脱いじゃって下さい。 私がやっておきますので」



部屋に戻り新しい上着に着替えて神崎に汚れた服を渡すと日向や篠原にげんなりしていた感があったけど神崎の背中が笑っているような気がする。 やっぱこいつも嬉しいんだろうな。



「清人ごめんね」

「いいって気にすんな」

「うん。 清人…… 」

「なんだ?」

「…… 明日遊んで?」

「んー、そうだな! 遊んどくか」

「柳瀬さん!」

「うわッ、びっくりさせんなよ」

「麻里だけズルいです。 私もいいですよね!? ね!」

「あ、まぁ別にいいけど」

「うわぁ…… 莉亜まで来ると」

「当然私もっしょ!」

「だよなぁー…… よし、みんなまとめて行ったほうがお手軽だしみんなで遊びに行くか」

「なんか扱いがテキトー!」



こいつらはしばらく休みなので暇さえあれば出来るだけ一緒に遊んで過ごした。

なんかこいつらもそんな風に見えたからな。



そして突然選択を迫られる日はやって来た。 口火を切ったのは篠原だった。 それは大学の入学式の前の日の昼にみんなで集まった時……



「清っち、そろそろ私らの事真剣に考えてくれた?」

「え?」

「区切りとしてはちょうどいいし。 私らも大学に入って心機一転だしね」

「彩、唐突に何言ってるの?」

「だってそうじゃん、麻里も莉亜だってそろそろいいでしょ?」

「そう…… ですね」

「麻里もいいわね?」

「…… うん、わかってるけど」



ちょっと前までワイワイしていたのだがシーンと静まりかえった。 そうだよな、ちゃんと言おう。








◇◇◇








「彩奈珍しいですね、あなたがそんなに感情剥き出しにしてむくれてるなんて。 柳瀬さんの前では我慢してたんですね」

「そりゃそうよ、私清っちにはそれくらい本気で好きだったんだから! だから清っちが真剣に選んだなら気持ちよく行ってもらいたいじゃん…… 私を選ばないなんてほんと贅沢だよ。 つーかあんたはなんでそんなスッキリした顔してるわけ?」

「十分わかりましたから。 私あの時…… いいえ、柳瀬さんと親密になっていくほどに私はやっぱり柳瀬さんの事が大好きだったんだなって。 それと同時にそれくらい柳瀬さんも…… 私は空回りしていた分随分と時間はかかりましたけどね。 それに十分わかりましたけどまだ終わったわけではありませんし」

「て言うと?」

「これからもあるじゃないですか? まだ先の事はわかりませんし私にももしかしたらと。 彩奈にしては随分弱気ですね?」

「あんた逞しくなったわね? まぁそんなんだから私的にはあんたを警戒してたとこもあったんだけどね。 私は2連敗、自信なくしちゃうよ」

「2連敗?」

「なんでもない、そうよね。 あんたの言う通りだわ。 まだこれからもあるしさ」



本当は凄く悲しいです。 私も彩奈と同じ気持ちなんですよ? 



柳瀬さんとの思い出を振り返れば嬉しかった事頭にきた事悲しかった事、どれも大切な思い出です、だから今の私があってこれからも頑張れるという糧になっています。 



「いたッ! 何するんですか彩奈!」

「1人で何悟り切った顔してんのよ? 気持ち悪いわね」

「あはは…… でも私達これからも仲良しだという事は変わりません!」

「どっからその自信は溢れてくんのよ? あんたのバカ面見てると腹いせにいじめたくなってきちゃうわ」

「もぉ! どちらにしても彩奈は意地悪する気じゃないですか」

「わかってるじゃん莉亜、仲良しって言うだけあるわね、ふふッ」



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