第139話


「さーて! 今日は柳瀬さんが来て2回目のクリスマスイヴです!」

「私らだって3回目だけどねー」

「良かった、一緒に過ごせて」

「私も参加しちゃっていいの?」



俺が会社に復帰して馴染んできた頃、季節はもうクリスマスになっていた。 今年は先輩も呼ばれて5人でクリスマスを祝う事になった。



「いいのいいの! 呼ばないと弥生さん抜け駆けしそうだし」

「えへへ、バレた?」

「要注意人物……」

「すいません先輩、こいつらが失礼な事言って」

「乙川さん、今日は来てくれてありがとうございます」

「うふふッ。 いいのよ、私だって柳瀬君取られたくないしこれならみんなで平等に祝えるじゃない」



なんか一部バチバチしてる…… のは置いておいて先輩とクリスマス一緒なんて初めてだな。



「って麻里! なんであんたはちゃっかり清っちの隣に座ってるのよ?」

「だってここがあたしの定位置だし」

「じゃあ私も柳瀬君の隣っと」

「あー、弥生さんまで大人げない。 まぁいいわ。 私は清っちの正面で」

「私は…… あれ!? 遠い……」

「あんたはトロいからよ」

「日向…… そんなに寄って来なくても今更どこにも行かないから少し離れろよ、超狭い」

「麻里ちゃん私も狭い……」

「あははッ、弥生さん無理に入っていくからそうなるんだよ」

「ほ、ほら! スペースはあるんですし場所を有効活用しましょう? 見て下さい、私なんてこんなに広い!」



神崎がテーブルをポンポンと叩き自分は広くて余裕がありますよとアピールするが誰も聞いてない……



「あーん…… またこのパターン」



神崎の言う通りスペースが十分あるけど3人が俺の座ってる場所に偏っているせいでめちゃくちゃ狭い。



机に並べられた料理もそのせいで俺の方へ偏っている、尚更狭い。



「で、ではいただきましょう、今日は乙川さんも作ってくれたんですし」

「あ、そうそう。 だから柳瀬君に味わって食べて欲しいな」

「はい、先輩が作ってくれたんですもんね」

「あたしも手伝った」

「私もだけどー?」

「ああ、わかってるよ。 日向、篠原に神崎、いつもありがとな」

「あー、清っち! 麻里の頭だけ撫でるとかって贔屓じゃないの〜?」



日向が頭突き出してくるから咄嗟に撫でてしまった……



そして夕飯を食べ終わると篠原が口火を切る。



「じゃあプレゼント交換しよっか! 清っち早くちょーだい!」

「俺からかよ…… 俺のセンスあまりよくないから期待すんなよ?」

「してないしてない!」

「わぁー、柳瀬君何くれるんだろうねぇ?」

「清人がくれるならなんでもいい」



キッチンのドアの脇に置いておいたバッグを持ってきて席に戻った。 こういうのって緊張するよな……



「ええと…… まず篠原にはほらこれ。 前から欲しいなって言ってただろ?」

「わお! この服確かに欲しいって言ってたけど覚えてたんだ清っち。 高かったでしょ?…… にしし、でもありがとう!」



篠原は服をギュッと抱きしめた。 満足してくれて良かった。



「次は日向のだけど。 お前のはここにない」

「え…… ?」

「あ! あるにはあるけど衣装棚なんだ、お前の部屋にそういうのないから床に畳んで置きっぱにしてるだろ? だからさ、明日組み立ててやるからさ?」

「そっか。 やった! ありがと清人」



よし、日向も喜んでる。 次は……



「それと神崎、お前にはこれだ。 ってこれで良かったのか?」

「はい、いつでも身に付けていられますし」



神崎のだけは一緒に行って選んだんだ。 眼鏡を壊されたから新しい眼鏡買うか? と言ったらクリスマスプレゼントとして欲しいって言ってたからな。



「ありがとうございます、コンタクトより眼鏡派になっちゃいそうです。 大切にします柳瀬さん」



神崎はコンタクトを外して眼鏡を掛けた。 前のデザインとほぼ変わらないから篠原に代わり映えしないと言われるが本人は満足しているからまぁいいか。



「それと先輩にはこれを」

「ありがとう。 何かなぁ…… あ! これ私の生まれ年のワイン」

「先輩の名前も彫刻してあるんですよ、グラスにもしちゃったけど良かったですかね?」

「もちろん! 私も大切にするね。 それと後で一緒に飲もう?」

「はい、是非」



ふぅ、とりあえず全員喜んでくれたようで良かった。



「何やりきった顔してんの清っち? まだ私らからあるんだよー? まぁ3人一緒なんだけどね」

「うん?」

「清人のプレゼント何がいいかなってみんなで相談したんだけど普段から使えるものがいいって事で」

「柳瀬さんへのプレゼントもここには持ってこれないので麻里の部屋に置いてあるんですよ、枕とベッドマットとベッドカバーのセットです」



道理でここ2、3日、日向が俺の事警戒してたんだな、てっきりようやく恥じらいの心が芽生えたのかと思ったぞ……



「一緒に寝ようね? 清人」

「一緒にって柳瀬君……」

「ち、違いますよ!? そういう意味じゃないです! いえ、そういう意味じゃなくてもあれですけど」

「わかってるって、ふふふ」

「ええと、ありがとな3人とも」

「次は私ね! 柳瀬君よくタバコ吸ってるでしょ? はい」



先輩から小さなケースを渡された、中を開けてみるとジッポーだった。 ってこれブランドのだ。



「これめちゃくちゃ高かったんじゃないですか!?」

「いいのいいの、でもタバコは吸い過ぎちゃダメよ、それとそれなくしちゃ嫌だよ?」

「はい、もったいなくて使えません…… いや、使いますけど」



普段居ない先輩が居る分話が弾んであっという間に時間が過ぎてしまった。


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