第2話
数日後、一人の女が私のクリニックに現れた。
その女性は橋谷から調べてくれと言われていた女性だった。
人間観察のプロである私の見立てでは、皮膚のつやを中心に見て、その年齢は二十一歳に見えた。
しかし実年齢は三十二歳。
私はショックを受けた。
この私が三十代前半の女を二十代前半と判断するなんてことは、考えられないからだ。
――そういえば十年間、その見た目が全く変わらないと言っていたな。
橋谷の話と目の前にいる女の容姿を照らし合わせてみると、彼女はこの十年間、老化が完全に止まっているといっていいのだろう。
「お隣さんに言われてここに来ました」
聞けば橋谷は、自覚はないだろうがあなたは病気なので自分の知っている医者に診てもらったほうが良いと彼女を言いくるめたようだ。
そんな出任せで一人の成人した女性を納得させることができるなんて。
さすが口先のみで人一倍の営業成績を上げているだけのことはある。
私に頼まなくても橋谷一人で全部やれるんじゃないかと思ったほどだ。
でも彼女は今、私の目の前にいる。
これからは私の仕事だ。
「お隣さんにすすめられて来たんですね」
「ええ。正直、病院はあまり好きではないのですが、大事な時期ということもありまして」
「大事な時期とは?」
「それは……」
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