第5話 破天荒が元同級生の場合
「あれ、
「……誰?」
彼女とのセフレジョブチェンジ騒動から二週間後、放課後の帰り道の途中で、見知らぬ?女子高生に声をかけられた。
「ほら、私だよ私、同じ中学だった」
「こんな子うちの中学にいたかしら?」
「覚えてないの?ひどいなー。というか、なんでいきなりオネエ口調?」
結構フランクに話しかけてきてるけど、やばい、全然心当たりがない。
目鼻はとても整っていて、制服のスカートから伸びる足は細く長い。
髪は茶髪のロングヘアで、化粧もしているようだ。俺の中学は身だしなみがそこそこ厳しかったので、髪を染めたり、化粧は出来なかったはずだ。
そのせいなのか印象が変わっていて、誰だかわからない可能性もあるのだが……それにしても、これくらい可愛ければすぐ思い出せそうなものなんだが。
「しょうがないからヒントをあげよう!」
「ヒントはいいから、さっさと名乗ってくれよ」
「今のバストはDカップです」
「まったくヒントになってない!?」
いきなり何なんだこいつ。元同級生?のカップ数をいきなり聞かされても、リアクションに困るんだが。
……そもそも俺、
「じゃあ、しょうがないからヒントその二ね」
「いや、だから早く名乗ってくれよ……」
「中三のときはBカップありました」
「せめてヒントになる情報を教えて!?」
さっきからなんなのこの子。セクハラなの?俺今セクハラされるために声掛けられてるの?
「もう、さっきから高志はわがままだなー。そもそも高志が私のこと思い出せないから、ヒントを出してあげてるのに」
「うっ、たしかに思い出せないことは申し訳ないんだけど、それならせめてクラスが何組だったとか、何部だったとか、もっとわかりやすいヒントがあると思うんだけど」
「中学の頃は、合計で七人に告白されました」
「ノーヒント!その情報もヒントになってないから!」
どういうことだ、全く会話が成立しない……あとなんかすごいデジャヴを感じる。具体的には二週間前に体験した気がする。
「じゃあしょうがないから、思い出してくれたらご褒美をあげましょう」
「ご褒美?」
「私のことを思い出してくれたら、ご褒美として、私が高志のセフレになってあげよう!」
「デジャヴぅぅうぅうーーーーーー!?」
どうしてだ!?なんでそうなるんだ……これはあれか、モテ期の変異種かなにかのか?
俺が完全にパニックに陥っているのを見て、元同級生(仮)はケラケラと笑っている……ひどくない?
「正直、聞くのが怖いから本当は聞きたくないんだけど……なんでご褒美がセフレなの?」
「なんでって……セフレを作りたそうな顔してたから?」
「そんな顔してないよ!?というか、セフレ作りたそうな顔って、どんな顔だよ!」
「こんな顔」
そういった元同級生(人違いの方が嬉しい)の表情は無だった。
もうびっくりするくらいなんの感情も乗っていない顔だった……やだこれ、すっごく怖い。
「そんな顔してたの俺?そもそも、そんな顔してたとして、その顔は絶対にセフレが作りたいって思ってる顔じゃないよね?」
「いやいや、性欲に支配されている顔してたじゃん」
「じゃあせめて、性欲に支配されてるような顔をしろよ!?」
「えっ、なに急に……セクハラ?女の子に性欲溜まってる顔しろだなんて……」
「なんでお前が引いてるんだよ!ずっとセクハラされてたのは、どう考えても俺でしょ!」
「ちょっとなに言ってるかよくわかんない」
「わかるだろ!いや、わかれよ!なに急にサン○ウィッチマンみたいな言い方になってるんだよ!」
「……?ちょっとなに言ってるかよくわかんない」
「絶対わかってるよね!?ここで同じ台詞は絶対わかってるよね!?」
ダメだ。この元同級生(新手の勧誘とかの方がまだよかった)に終始ペースを握られている。
結局、名前も思い出せず、名乗ってもらうこともできない。詰んだな。
当の本人は、散々俺をいじってご満悦なのか、とてもニコニコしている。
どうやってこの状況を打開しようか、俺が必死に考えていると、後ろから聞きなじみのある声が聞こえた。
「
「姫子さん!?」
振り返ると、そこにいたのは姫子さんだった。今日は用事があるからと、学校で別れたはずだったのだが、いったいどういうことだ?しかも今、この子のことを名前で呼んでなかったか?ちなみに、結希という名前を聞いても、俺は全く心当たりがない。
………………………………本当に誰!?
「よっすー姫子。約束の時間ぴったりだね、さすが姫子だ。今日もエロい」
「いや、今の会話にエロいとこ一つもなかったでしょ。あと、今日もエロいって、私がいつもエロいみたいに言わないでよ」
「自覚がないかもしれないけど、姫子はいつもこう、なんかエロいんだよ」
「あーはいはい、とくに理由なく言っただけでしょ。そもそも、エロいっていう話だったら、結希の方がエロいでしょ」
「いや、私のは下ネタが酷いだけだから」
「自覚はあったんだ……」
目の前で姫子さんが、結希と呼ばれる自称元同級生と、親しげに会話をしている。
「……………………」
しかし、俺の脳は処理が追いつかず、言葉を発することができない。
「で?私と約束してた結希が、どうして高志と一緒にいるのかなー?」
「ちょっと姫子、圧が、圧がすごいって。もう、自分の彼氏が友達と一緒にいるのを見ただけで嫉妬なんて、姫子も可愛いとこあるじゃん?」
「私には可愛いところしかありません」
「その返しは、照れ隠しとしては斬新だね」
まだ少しだけだが、今の会話を聞く限り、二人はかなり仲が良いようだ。
だけど、姫子さんと俺は同じ中学ではない。ということは、この結希と呼ばれる子と、姫子さんはいったいいつ知り合ったんだろう?ますます謎が深まっていく。
「説明するとね、高志君に会ったのは偶然だよ?姫子との待ち合わせ場所に向かおうとしてたらたまたま見つけちゃって、好奇心を抑えきれずに声掛けちゃった」
「本当、結希ってばそういうところあるよねー。もう……ちゃんと今度紹介するって言ってたのに」
「ちゃんと紹介するって言葉、今日のも入れると、もう四回目なんだけどなー?」
「そ、それはー……」
「普段は私と同じノリのくせに、人生初カレができてから、この話題のときだけ素で照れちゃって、姫子はほんと可愛いなー」
「うぅー、なにも高志がいる前でいじらなくたっていいのに……」
恥ずかしがってる姫子さん、超可愛い!!!しかも、俺のことで照れてるなんて、もうたまらん!!!
……いや、落ち着け俺。レアな姫子さんの態度にテンションを上げる前に、まずは目の前の謎を解決しないと。
「……えぇーっと、姫子さん?さっきから俺が絡まれていた、この人はいったい……」
「あっ、結希が本当ごめんね、高志。改めて紹介すると、この子は
「……え?」
「もう姫子ー、なんで友達かな?って疑問形なの?そこはちゃんと、一番の親友ですって紹介してよ」
ちょっと待ってくれ。どういうことだ?福浦さんは姫子さんと小中一緒?なら当然、俺とは中学は一緒ではないはずなのに……え?
混乱している俺を見て、とても嬉しそうな表情の福浦さんは、改めてというか、初めて俺に自己紹介をしてくれた。
「まあ、そういうことで、姫子の親友の福浦結希です。高志君のことは、姫子から一緒に写ってる写真を見せてもらってて、だから知ってたっていうオチでした。だから当然、私と高志君は初対面だし、中学も一緒じゃないよ」
「……………………そういうことかぁーーー!!!」
つまり俺は一方的に認知されていて、福浦さんに遊ばれていただけらしい。迷惑な話だが、元同級生の顔と名前を全く覚えていない薄情な野郎になっていなくて、心底ほっとした。
「もう、結希ったら。私のいないところで、高志をからかって遊ばないでよ」
「あははー、ごめんねー?だって、姫子から話を聞いてると、かなりノリよくツッコんでくれるっていうから、私も体験してみたくって」
「そんな理由で、初対面の俺を困らせるなよ!マジでビビったんだぞ!」
「だから、ごめんって言ってるでしょー。小さい男は嫌われるよ?」
「人の下腹部を見ながら言うなよ!違う意味に聞こえるでしょうが!?」
平然と下ネタをぶっ込んでくる福浦さん。いじられるこっちの身としては、かなりのカロリーを奪われている気がする。
でも、姫子さんの親友と言うからには、きっといい人なんだろう。そうに違いな
「じゃあ高志君、セフレの件は考えといてね!」
「…………おい、高志。ちょっと詳しく話を聞こうか」
「……………………えぇー……」
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