第17話
「それは、……できへん話や」
何も言わず、二つ返事でOKしてはくれないだろうと思っていたけど、まさかこんなにあっさり断わられるとは。
でも、残念ながら今までのように、はいそうですかと引き下がる私ではない。
「何で?」
ジッと瞳を見つめて言う私にヤツは頭をかいて私に言う。
「何でって、当たり前やろ? 最近あったばかりのお前にこの店任せて、俺は好きなようにしろだなんてできるわけが無い」
「そんな事無いんじゃない? 本人がそうしたいって言ってるんだから任せてみるのも手だと思うけど?」
「おいおい、何だよその理屈」
「それにコレには大きな条件がついてるのよ?」
「条件?」
「夢を叶えるって言う条件。叶えんかった時は給料の代わりに私、この店ごと、この家もらう」
「なっ! お、お前!」
ヤツは驚いて、私を見つめた。
真っ直ぐヤツを見つめている私の顔をその瞳の中に映して、私を見ている。
私はニッコリ笑ってヤツの両頬を両手で包み込んだ。
「なぁ、私の事嫌い?」
じっと見つめて聞く私の目の前でヤツは見る間に顔を赤くし、視線を外すため顔を背けようとしたが、私の手がそれを許さない。
「言うて、私の事が嫌いなんか?」
「き、嫌いとかそういうのは、無い」
「それやったら、決まり!」
強引にそう決めた私に、ヤツは呆れた顔を向けて指を一本私の目の前に立てて言った。
「1つ行っておく。住み込みは無しやで」
「……なんで?」
「嫁入り前の娘が男と1つ屋根の下なんてアカン! 夜はちゃんと家に帰れ!」
「プッ! ジジむさっ!」
「爺むさかろうとなんだろうと、これだけは守ってもらうからな。それと、今日の夜にでも両親に挨拶に行くから!」
「なっ! そ、そんな恥かしいことせんでエエって!」
「アカン! 挨拶と通いで来ること! コレが俺の条件や」
「……ちぇ、分ったよ」
口を尖らせて、舌打ちした私とは違い、ヤツはしてやったりと言った表情で笑う。
でも、その表情がとても楽しそうで嬉しそうで、私は口を尖らせながらも、その端っこで笑っていた。
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