第11話

 次の日、私は久しぶりに少し短いスカートを穿く。

 化粧はせず、髪の毛もポニーテールにしただけだけ。

 でも、ジーンズにフリースと言う格好ではなく、少し小綺麗な格好。

 私が弟の自転車に乗って出かけた場所は図書館ではなかった。

 自転車では結構距離があるけれど、私が出かけたのは駅前。

 バスで行かなかったのは……ちょっとしたずる賢さ。

 そう、私は実行する事にしたのだ。

 私は知っているから。

 【良い事】って言うのは起こさないとやってこないのだ。

 駅前の商店街にたどりつき、自転車を押して店を眺める。

 駅から歩いて商店街が終わるちょっと手前に「あずみ書房」と言うシャッターにかかれた文字を発見した。

(あれ? シャッターが……)

 コレといって休みと言う張り紙があるわけでもないシャッターを眺め、腕時計を見る。

 12時40分。

(昼休みの休憩? にしたって、ココまでシャッターを下ろすのかな~?)

 自転車を店の近くに止めて、私はチラリと店と店の間に開いている路地に目をやった。

(……店舗がココってことは、多分この裏側が家ってことになるんだよね?)

 う~んと少し考えはしたものの、あくかどうかもわからないシャッターの前に座っているほど堪え性の無い私はススッとその路地に入っていく。

 意外に奥へと長い、その路地を抜けると小さな庭があって、その庭に通じる窓の所にヤツが座っていた。

「……なんだ、居るやん」

 思わず呟いた私の声に俯いていた顔を上げたヤツは少しビックリした顔をして、ツッカケを履いて庭に出る。

「お前、どうして?」

「ん~~なんちゅうか。来ちゃった」

「来ちゃったって……ったく、しようが無いな、上がるか?」

「……止めとく、なんか、大変なんやろ?」

「ふぅ、気にしなくてエエ。かえって誰か居てくれるほうがエエから」

 なんだか、楽しげに話していたその時とは違い少し憔悴したと言うか、元気のないヤツが居て、ヤツは少し口の端をあげて無理やり微笑んで、庭に接している柵の門を開け、私を中に入れた。

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