第4話

 手に持っていた児童書を床に置き、頭の上に乗っている本を手に取る。

 ゆっくりと立ち上がればそこにはスーツを着て、背が高く、体の細い男が1人。

 特等席をとった、不愛想なあの男だ。

「しまい忘れだ」

 つっけんどんに言う男から渡された本を見てみれば確かに私が持って行った絵本の1つ。

「……あぁ、どうも」

「なんや、それだけ?」

「ありがとうございましたとでも言えば満足かしら?」

「可愛くない女」

「知らない男に色気や可愛気を振りまくような性格じゃないんでね。可愛い女が欲しけりゃ別を探したら?」

「良く言うな~さっきまで童話読んでウルウルやったくせに」

「フン! 涙を出してこそウルウルやろ? その手前やったら泣いたって言わん。知らんの?」

 全く本当になんて嫌な男だろう。

 我関せずと知らん顔していたくせにしっかり私の様子をうかがっていたのだ。

 フイッと背中を向けて、再び本を仕舞い始めた私の後ろからフッと噴出すような笑いが聞こえ、更に呟きが聞こえる。

「なんとも、威勢の良いことで……」

 ムッとした。

 なんだか分らないけど反射的にムッとした。

 しゃがみ込みながらもキッと睨みつけるように振り替えれば、さっきは気づかなかったが、その男は自分の荷物を抱えていて、図書館の出口へと向かっている。

 一言、何か一言文句を言ってやらないときがすまない!

 そう思った私だったが、言うべき一言が見つからず、あぅあぅとオットセイのように口をパクつかせた。

「*$#*!! あぁ~もう!」

 私は自分の不甲斐無さに苛立ちながら、手元に残っている本を急いで本棚に戻して、慌てて転がるように男の後を追った。

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