10日目 ゴールデンウィークの過ごし方

 彼曰く、去年までの私と、今年の私は違いますよ。


 ***


 毎年のようにゴールデンウィークを無為に過ごしている。


 何かしようと毎年思い、朝起きるたびに何をしようかと考え、でも家を出ることはなくて、気づけばベッドの上で何時間も寝転んで天井を眺めていることだってある。

 朝、目を覚ましてソシャゲのログインボーナスをもらうルーティンだけは忘れないのに、そこから体を起こして着替えるまでに何時間もかかる。

 そろそろ家を出ようかなと考えるころには、みんなが昼ご飯を食べるころ。私にとっての朝ご飯はとても遅い。

 昨晩寝る前に炊いておいたお米をよそい、冷蔵庫にいつも置いてある納豆を取り出して、その日の気分で適当に薬味を追加する。

 一緒に出したパックの味噌を茶碗に入れて、フリーズドライの具材をお湯で戻してかき混ぜれば即席の朝ご飯が完成。


 ここまで時計を意識して見ていないから、今が何時かはわかっていない。いくら窓の外が気持ちの良い快晴でも、私の頭には朝もやがかかったままだ。


 ちょこんとさみしくローテーブルに並べたごはん、ゆっくり噛み下して消化していく。のたりのたりと立ち上がり、食器類をシンクに入れてすぐに洗うかをしばらくためらってから、後でいいかと思いいたる。

 そこから何をしようかと本格的に考え始めるのだけど、片手に持ったスマホには音楽に合わせて踊る女子高生くらいのショート動画が流れている。いつしか思考を抜き去られた頭に浮かぶのは、#ootd でリーチした服装写真をまとめた動画。

 気づけば時間は1時間、2時間と過ぎていて、知らぬ間に目をつむって寝ていたりする。

 次に気づいたときには外はオレンジ色に染まっていて、出かけるにはあまりにも遅い時間。柿茶色に縁どられた雲の手前をカラスが通り過ぎていくのをぼーっと眺めながら、ゲーム画面が付きっぱなしのiPadに充電コードを挿す。


――今日も外出れなかったなー……。


 人間は2日に1度は太陽の光をしっかり浴びないと、体内時計がくるってしまう。

 メラトニンというホルモンの分泌が止まらないからだそうだ。活動時間が始まってから15時間ほどで再び分泌が始まり、徐々に深部体温を下げて眠気に適した状態に移す作用を持っている。そのほか、抗酸化作用による新陳代謝の向上、病気・老化の防止、体温やホルモン分泌リズムなどの調整などの効果があるという。


 日本人にとって貴重な長期休みの1つをただベッドの上で食いつぶしてしまった。

 そんな後悔だけが、脳裏にシミのように残っている。


――そんなことしてたまるか。


 と、いうことで、今年のゴールデンウィークはシミ対策をしてみました。

 去年までとは違うのだ、と小さく握りこんだ手には、終わってみれば確かな手ごたえを感じています。素直にうれしい。



 今年のゴールデンウィーク、私は意気込んでやったことは大きく2つあります。


 劇場版コナンをすべて観る。

 これは視聴済も含めてすべて。ふと思いついて途中からストーリーの書き出しもしてみた。日記のタネにもなったのはうれしい誤算といえるだろうか。(ネタバレ云々とかで怒られてしまわないかだけが怖いけれど)

 それに自分にとっては、映画のストーリーを書き出してから感想を考える方が性に合っているらしいと分かったのもいい発見でした。

 途中で寝たりしなければ、自分の中での映画への理解を深められるし、勉強にもなる。パッとその場で感想を言い始める人たちは本当に尊敬してしまいますね。


 挽肉と米、予約チャレンジ。

 途中で日記にも書いたけれど、勝手に予約チャレンジしてました。

 職場の先輩と話したときにぜひ行ってみたいと言っていたので、朝イチの記帳予約のために毎日早起き。3度目の正直でありついた焼きたてのハンバーグと炊きたてのお米は最高においしかったです。

 実は行ってみたいと言っていた先輩のうちの一人はタイミング悪く連れていくことができなかったのですが……、それだけは心残りです。

 あとで謝ったら「むしろ毎日のように並んでくれてありがとう。またの機会によろしく」と感謝し返されました。別の店に連れて行ってもらう約束と、次に並ぶときは絶対にタイミング合わせることを話しました。

 個人的には久しぶりに食べることができてうれしかったのもありますが、朝イチの予約に並ぶためにめったに起きることのない時間に起きることができたのが良かったです。


 副産物ではありますが、朝7時過ぎには起き上がった自分が信じられませんでした。

 シャワーを浴びて水を飲んで、余裕ぶってヨガや筋トレまでやってみたりして、ついでに気分の上がる音楽も聴いてみたり。ほんのりと夜の涼しさ残る朝の中を歩くのは、街中なのに林の中を散歩しているようでした。

 濃すぎない空色が覚醒したばかりの目に心地いいと感じたのは、高校の朝練で早起きした以来のこと。当時の若さがまぶしいですね。


 懐かしい体験と新しい体験、2種類の前向きな変化を感じることができた日々でした。総じていい休日だったといえるでしょう。続けていきたいものです。

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