11日目 お仕事の話

 彼曰く、仕事って大変。


 ***


 仕事がひと段落しそうなとき、安心できてうれしい気持ちと一緒に本当に終わるのかと半信半疑な気持ちが私の中で混ざり合います。


 一番信頼している自分の目で見て確認しているので、間違っていることはまずないでしょう。しかし私も人間、ただの人。神ではないのです。現人神なら世にも不思議な超常の力でもって「この部分が設定と違いますね」「渡さないといけないデータを修正前のデータと間違えてます」などのちょっとした抜け漏れを見つけてくれるのでしょうけど、私には無理。


 だからこそ、私以外の人たちの助けが必要なのです。それぞれの道のプロの人たちが。


 この仕事に限らずだと思いますが、仕事をしていくうえで大変なのは作業を進めていくことももちろん、関わる人との話し合いや連携をしっかりととることはとても大切です。


 大量消費社会で、特にコンテンツは早送りで流されてしまう。高速道路を行きかう車よりも往来の激しいネット社会で、消費者の目に残る作品や映像を作り上げるのは、ただの視聴者であったころには想像できないほどに難しい仕事。血反吐を吐く思いでやっている人たちがどれだけ悔しい気持ちをしまっているのか、必死で考え抜いた結果残した作品をほんの数十秒見ただけで「この程度か」と切り捨てられたときのつらさたるや、両手で抱えて収まるものであるはずもなく。そこには個々人の努力はもちろん、関係してくれている人たちからの信頼や期待、共感もあるのです。信じて次のセクションに仕事を任せた人たちからの想い。これはかかわってみないとわからない部分だと、当事者になった今だからこそ感じます。


 お仕事小説やお仕事ドラマなど、昨今売れている作品の中には職場でのラブコメが多い印象。それも男女のラブだけでなく、男同士のBLものは特に増えましたね。女性同士も一時期話題になりましたが、流行当時ほどもてはやされてはいない印象です。


 こうした作品はいったいどうやって制作されているのかなと、作り手を目指すようになってから考えるようになりました。作者自身が当事者である場合もありますが、そうでない場合はどうなのか。周囲で該当する方に取材を繰り返したり、友人知人からの体験談を通じて政策につなげている部分もあるのでしょう。いまだ根強いファン層を持っている異世界ファンタジーものと違って、現実に即したシーンや場面を描く際には、法律やリアルな描写も想定しつつ書いているのでしょうけれど、まあ考えることが多そうです。


 取材、イメージ、書き出し、清書、推敲。取材、イメージ、書き出し、清書、推敲。その繰り返し。

 気の遠くなるような自問自答がドラマの中の主人公の葛藤と重なります。


 たしかに自分で何かを考えて行う部分はある。けれど仕事ともなると、結局はその積み重ね。セクションが違うだけで、みんながみんなそれぞれに努力を積み上げてくれているからいいものが出来上がるわけですね。


 小学生の図工の時間、自分ひとりですべてを作り上げるということに「無理だわ」と早々に諦めて成績表唯一の3を記録したときを思い出します。何かを作るには誰かの助けが必要なんです。お仕事って良くも悪くも集団作業なんだなとつくづく感じる休憩時間でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る