13日目 『戦慄の楽譜』感想

 彼曰く、絶対音感、私も欲しかった。


 ***


 音楽を主題にする作品って、結構難しいと思うんです。

『蜜蜂と遠雷』『四月は君の嘘』『響け!ユーフォニアム』『ラ・ラ・ランド』どれも名作ですが、映像と音楽をリンクして興奮と一体感を感じることができるのは少ないです。

『戦慄の楽譜』については、音楽と映像との相関性はそこまで求めてないのだと思います。ただ音楽シーンについてはやはり見せ場なこともあってかよくできていました。冒頭の爆発シーンに至るまでの疾走感と焦りを感じさせる音楽、終盤のオペラの見せ場で歌う歌手とパイプオルガンの音楽、どちらもぞわぞわとする。音楽って、普段聞かないからこそ、良さが出るのかもしれませんね。



 世界的なピアニスト・堂本一揮が主催する堂本音楽アカデミーの練習室で爆発が起き、一期生の2人が死亡、ヴァイオリニストの河辺が重傷を負う。現場にはフルートの胴部管が残されていた。

 その調査に1人訪れていたコナンは、蘭から堂本ホールのこけら落とし公演の誘いを受けるも、事件調査のために断る。蘭は機嫌を損ねて軽い口喧嘩になるが、昔些細なことで喧嘩した際に仲直りしたきっかけを思い出せないでいた。

 園子のツテで公演のリハーサルを見学していたコナン達は、オルガン奏者に転向した堂本一揮のほか、ホール館長の譜和、オルガン調律師のミュラー、公演責任者で一揮の息子・弦也、ソプラノ歌手でアカデミー卒業生の千草、河辺の代打でヴァイオリニスト・山根、そしてソプラノ歌手の秋庭と出会う。コナン達の通う帝丹小のOGでもあった秋庭に、合唱の練習を見てもらうことになるが、当日秋庭の飲み物を勝手に飲んだ元太が突然苦しみだす。検査の結果、声がしばらく出ない程度の症状で済んだが、何者が飲み物に刺激物を入れたことが判明した。さらにその帰り道、一行はダンプカーに襲われる。

 ほどなくして、アカデミー一期生の他の2人が死亡し、それぞれの現場からフルートの頭部管と足部管が見つかる。死亡した4名は過去にピアノカルテットを組んでいたことが判明するが、犯人の導線はいまだにはっきりしない。

 翌日、コナンは秋庭の家を訪れ、彼女の寝室でフルートと男性の写真を目にする。その男性は秋庭の婚約者だった相馬光という人物で、死亡した4人に酒を飲まされ、落下事故で死亡していた。コナンは秋庭の森林浴に同行し、そこで彼女を狙撃する犯人に遭遇する。秋庭は足を撃たれ、コナンも追撃を警戒したが、それ以上の狙撃はなく、コナン達は逃走に成功する。

 こけら落とし公演当日、公演直前のリハで、コナンと秋庭はパイプオルガンが1本だけ音ズレしているのに気づく。行方不明のミュラーの代わりに一揮に伝えようと探し回るが、外に出たところで何者かに気絶させられる。公演時間になっても戻らない秋庭に代わり、千草が歌手として立つことが決まり、会場が動揺する中、蘭や少年探偵団たちはコナンの戻りが遅いことを心配していた。そのころ、コナンは秋庭とともにボートに乗せられ運河の水門まで流されていた。脱出は困難だったが、水門に設置された電話にサッカーボールを当てて受話器を取り、ボタンのプッシュ音と同じ高さの音を2人で発声して110番することに成功する。

 公演が開始直後から、ホール外側の支柱では爆発が続いていたが、完全防音のホール内は誰も爆発に気付かず、公演が続けられていた。警察のヘリで救助されたコナンと秋庭はホールに直行、中の観客たちを救うために佐藤、高木両刑事とともに屋上からホールに突入する。刑事は爆弾を探しに行き、コナンと秋庭は会場で待機するが、音のずれたパイプと爆弾が連動していることに気付く。さらにコナンは、犯人がリモコンを持っているのを見たため、公演を止めても爆破は免れないと知る。そこで秋庭がアメイジンググレースで公演に乱入して時間を稼ぐ間に、コナンはパイプのセンサーを外し、犯人と対峙する――。


 この話、結構好きです。新一と蘭の昔の話も盛り込まれているし、スタートからラストに至るまでの伏線のつけ方とかがきれい。音楽の高尚な理解ができない私には、わかりやすい動機とかストーリーラインのおかげで楽しめたと感じているのかもしれません。

 音楽の使い方もそうですが、演出がこの映画は上手いと思いました。幻想的というか、望郷の感というか、色づかいやレイアウトがいいんですかね、心になじむ感動って印象です。

 コナン映画の中では一番印象に残っている気がします。

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