16日目 プール

彼曰く、たまにはスプラッシュマウンテンしたい。


 ***


映画にはいろんな要素が詰まっている。

自然、機械、建物、空、水、食べ物、働くこと、ヒーローと悪党の戦い。

専門用語ばかりの科学の世界がテーマだと、私の頭ではついていけない。

核とかウェブとか、ようわからん。

スパイダーマンくらいぶっ飛んだアクションの方がまだ気持ちいい。

飽きもせず『スパイダーマン2』2周目してるからなんですけど。


この冬は晴れが多いからか、乾燥をより強く感じる。

雪が降っても湿度が高い証拠にはならない。

空気が固まってしまうということは核となる埃とかを中心に水分をすべて持っていかれて雪の結晶になっているのだから。

今年の乾燥はなかなかにヘビーらしい。


だからかな。

映画の中で水の中に飛び込むシーンがあったんだけど、それを見た時になんだかとても海に行きたくなった。

海じゃなくてもいい、とにかく水の中に飛び込みたいなと思った。

ついこの間、雪が降った次の日に外を歩いていたら水たまりがあった。

雨が降っていないのもあって、地面のくぼみには水がたまるものだということをすっかり忘れてしまっていた。

大きくはない、A3サイズくらいの小さなものだったけれど、その発見は私の子供心をくすぐった。

晴れ渡る青空を背景に、少し大きめに腕を振って帰る私の姿がちらりと映る。

いつもは見ない角度の私。

水たまりの向こうは裏の世界、なんて設定の映画がポケモンか何かであったけれど、まさにそんな感じ。

見たことのない世界を感じているような、不思議な感覚が脳を刺激した。


海なんて長いこと行っていない。

プールだってなおさら。

ディズニーのスプラッシュマウンテンも好きだったけど、濡れるのを気にし始めて乗らなくなり、いつしかディズニー事態に行かなくなってしまった。

それでもあの時の思い出は。

頭から水をふっかぶる気持ちよさは忘れない。

ぐるぐると考え込んで、かっちりと固まってしまった心と体に、大量の水がぶち当たる感覚。

無駄な考えが吹き飛ぶ爽快感。

一緒に水を被った友人とのバカな思い出はしっかりと残っている。


あの時とは違う脳と体になったけど、心は当時のままみたい。

「あー、スプラッシュマウンテンしたい」

豪快にシャワーを浴びるでも、いっそ滝行をするでも可。

雪じゃなくて雨が降ってほしいなー。

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