8日目 自炊損

彼曰く、珍しく自炊したのに!


 ***


忙しい人あるある。


自炊、サボりがち。


サボることにもそろそろ飽きてきたというか、さすがに貯金をしないとまずい。

社会人3年目の終わりにようやく現実と向き合うことを決心した私は、先日私の金銭画を見直したわけだけど。


曰く、貯金には自炊がいいという。

「自炊か・・・」

米を炊くのは別にいい。

実家から届く米を使わないといけないという建前がある分、米を炊くことに抵抗はない。

だがおかずを自分で作るということには抵抗があった。

「毎日作るのキツイのよね~。複雑なもの作れないし・・・」

どうせ作るならちょっとくらいいいものを。

そんな思考が働いてしまうから、簡単なメニューでもいいから自炊をしようという気にならないのだ。

料理が結構できるわけでもないのに、料理するのに変なプライドを持っている私はスーパーで悩んでいた。

メニューで悩むか、金がないことに悩むか。


「・・・簡単なやつでいいか」

悩んだところで始まらない。

そもそも大したメニューも実現できないボンクラ火力のIHで、大それた料理をしようと考えているのがおかしいのだ。

タマネギ、もやし、豚肉、ピーマン、鶏むね肉。

どこにでも売っている食材を買って脳内計算するとすぐに1000円に到達した。

「こんなん2日でなくなるわ・・・」

払った代価に対して得られた食材の少なさを思いながら、今後は買う場所についても考えないといけないことを痛感する。

帰り道のコンビニは、体が許しても脳が許してくれなかったから寄らなかった。


そうして作った野菜炒め。

豚肉、タマネギ、もやしで彩りもなにもない。

味付けの焼肉のたれが茶色を強めている。

「美味しいからよし」

いくつかは夜食に、残りはタッパに詰めて次の日のおかずとして取り分けた。

これを続ければ先月より出費は減るはず。

この努力が大事なのだよ、梅ちゃんや。


そう奮起したはずなのに・・・。



忙しい人あるある。


持ってくるものを忘れがち。


「せっかく自炊したのに!」


昨日作って冷蔵庫にしまった野菜炒めを思いながら、同僚と定食屋に入った。

運ばれてきた野菜炒めは自分で作ったものと同じ味がしたのに、見た目の彩りのせいで3倍増しで美味しく感じた。

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