7日目 有休消化
彼曰く、半休使いに私はなる。
***
「使えるものはうまく使う。賢く生きるためのコツだよ」
年度末のこの時期、今までに残ってしまっていた有休を使うように上司に言われてしまった。
上司に言われないと有休を使わないのはどうなんだろう。
人としてというよりも、社会人として。
働くことも大事だけど、きちんと休むことも大切だと言われている。
「休んで給料がもらえるのはうれしいけど・・・」
私の職業は休むに休めない。
休んでもいいが、タイミングが読みづらいことに定評がある。
私の作業自体はスケジューリングと素材管理だ。
確かにすべてがデータなら有給扱いで家で作業することも可能だが・・・。
「紙じゃないとうまく描けないのよね」
アナログ人間しかいないこの業界。
ベテランほど、デジタルを食わず嫌いしている先人たちを心のどこかで残念に思いながらも理解できてしまう。
「デジタルだと外連味がなくなるんよ・・・」
何度も描き直せるからこそ味のある絵になる。
デジタルの絵が嫌いというわけではないけれど、その方が人間味にあふれていて別の良さを味わえる。
人によりけり、仕上げのやり方次第だと思うけれど。
アナログの場合は素材移動もアナログ。
受け取った紙の素材を袋に詰めて次のセクションに受け渡し、また同じことの繰り返し。
後半はさすがにデジタル化が進んでいるけど、前半部分はそうもいかない。
そしてその前半部分がスケジュールの大半を占めているのだ。
「休めないのよねぇ」
しぶしぶながらも有休を取ろうとしても、1日取れば心の平穏が乱されかねない。
休みどころじゃなくなってしまう。
「半休を使えばいいよ」
「それで休める?」
「物は使いよう。使えるものは上手く使わなきゃ」
来月には消えてしまう有休をどう消費するか、悩んでいる私の横で同僚が口を出してきた。
「半休消化カンパニーだね」
「どんなホワイト企業だよ」
「それw私も思ったww」
ちゃんと取るものは取らないとね。
今月忙しくないタイミングで取ろうかな。
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