29日目 靴擦れ
彼曰く、私にはまだ早かったみたい。
***
革靴は大人の証。
履く人は選ぶかもしれないけれど、履ける人には絶大な自信をくれる。
優越感と言ってもいい。
自分には似合わないと思っていても、革靴が合わない人はいない。
服装と合わせて考えれば、自分の足元からきれいな印象にしてくれる。
「人が初対面の人に会った時、気を付けてみるのはどこだと思う?」
「え、やっぱ顔じゃないの?あ、男性だと胸か・・・。いや女性でも男性の胸は気になる・・・」
「恋愛対象としてみるときは確かにそうかもね。でも仕事相手とか、対人関係としてみた時にはどうかな?」
「えー、あんまり考えたことなかったな・・・。うーんよく聞くのは髪型かな、それか顔?」
「まあその2つもそうだけど、実はそれ以外にも見られているところがあるのよ」
「え、そうなの?」
「歩き方には性格が出る。人となりが出やすいのは実は足元なんだよね」
「足元・・・、つまり靴ってこと?」
「その通り!靴って好きじゃないとたくさん持ったりしないでしょ?同じ靴を連日履く人は多い。でもその割に靴のケアをする人は多くない。靴を大事に履くことは出来てもずっと傷つけずにするのは難しいのよ。日々のケアを怠れば、その分汚れと傷が靴に目立ってしまうからね」
「なるほどね。その人がまめな人かどうか、普段から周りの目を気にしているかどうかは靴を見ればわかってしまうってことか・・・」
「冬はキレイめな服がかっこよく映る季節。シャツとかコートを着るなら、革靴は外せないでしょ」
そんな口車に乗せられて、流れるように革靴を買って早1か月。
すっかり慣れたかな~と思っていたのに、履くたびに足が痛いのです。
しかも右足だけ。
甲高なのか、親指につながる甲の出っ張った部分が上部の張ったところに毎回当たる。
かかとは必要以上に擦れるから、当たるたびに痛みが響く。
歩くたびにそうなるものだからいつものように軽い気分で歩けない。
スニーカーの時は羽が生えたようにウッキウキで歩けるのに、革靴になった途端重々しい歩き方になってしまう。
それだけに左足は気持ちのいいくらいにフィットしているものだからいやらしい。
履きたいのに、履きたくない。
究極の二律背反が足を引っ張って、毎日のコーディネートから何となく革靴をはずしたくなってしまった。
大人な服装をすることは出来たけれども、まだ慣れてはいないらしい。
大人になるにはこういう大変な時期を乗り越える必要があるんだなぁ。
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