5日目 仕事始め
彼曰く、私の特性はスロースタート。
***
仕事始め。
元旦を越え、3が日を終えると、世間は仕事を始めるための準備を始めないといけないらしい。
むろん私の職場も例にもれず、1月5日から仕事始めをすることになっている。
ただそれは「職場が」というだけであって、「全職員が」仕事を始めるという意味ではない。
会社にいる人間がすべて社員ではないからなのか、いつまでも仕事をしようと思えばできてしまうのがこの職場の特徴。
仕事納めもそうだった。
収められる人は早めに納めて、12月最終週を優雅に地元に帰省して過ごす人もいれば、逆に大晦日ギリギリまで出社してクリエーターとのやり取りにてんてこ舞いになっている先輩もいた。
世の中には納められる仕事と、納められない仕事と多種多様な仕事が存在しているのだ。
仕事が好きな人にはおあつらえ向きの職場である。
一方で、国の方針やお堅い業種向きの感覚をお持ちの人たちにとっては「ありえない」業種なんだと思う。
現に、総務や経理の人たちは早々に仕事納めをしていた。
「仕事納めができる人は早めに納めて、年末年始を休養に当て、しっかりと英気を養ってください――総務〇〇より」
「仕事なめてんのか?」
総務からの年末年始の稼働についての結びの一文も、制作サイドにとってはもはや煽り文だった。
こちとら急ピッチで進めないといけない仕事が盛りだくさんなんだよ、休んでる暇なんてねえ。
かくいう私はというと、年末年始の休暇は会社が設定した通りの期間はしっかりととった。
日記を見て分かるかは置いておいて、ほぼ毎日行きつけのスタバに出没し、昼前から夜までひたすらに読書なり、日記を進めるなり、他のタスクをこなして過ごしていた。
おかげで『テスカトリポカ』を読み終えることができたし、次の仕事に向けての思考も多少は進めることができた。
思えば社会人1年目の時は年末年始も出社して仕事。
昨年末も、気が向いたときに出社してためてしまった仕事を片付けるか、ひたすら自室でごろ寝をしていた。
あのころとは違う充実感があるのは間違いない。
無為な時間がほとんどない、中身の濃い休暇になったと思う。
ただ、休暇とはいえ少し気が張り詰めすぎていたのか。
はたまた読書する時間が多くて、気分が読書したいモードに入っているからか。
本を開く行為以外に行きつくまでに時間がかかってしまっている。
仕事始めのはずの今日、私がしたことといえばクリエーターたちへの年始の挨拶と次の仕事の原作を読むことだけ。
なかなか気分が乗ってこないので、このままだと今週はずっとその気配だと思う。
スロースタートにもほどがある。
レジギガスか、私は。
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