3日目 こたつ
彼曰く、実家が恋しくなる季節。
***
「あけおめー」
「やほー、来たね。おめでとー」
親戚と共に過ごす正月。
こたつを囲んでお酒を飲んで。
買いすぎた料理で腹を満たす。
至福の時間。
冬のボーナスが少なかった。
今年は一段と寒くてダウン買うか迷ってる。
無印で買ったクッションがいい感じ。
前にオススメされた化粧水も肌馴染みよくて毎日使ってる。
そういえば初めてZOZOTOWNでこのコート買ったんだけどどう?
え!ONE PIECEあたまから見てんの!見よ見よ!
話すことなんてすぐ無くなって、Netflixで時間を潰す。
無音の時間を埋めるように笑い声。
「やっぱアラバスタ編は泣けるよねぇ」
読者が選ぶ名シーントップを満場一致で泣きながら見る。
20も違う親戚と、同じ作品で笑ってられる。
配信サービスはやっぱりすごい。
初めて使った時の感動がよみがえる。
さっきまで話題を探していた目が、画面の色を、形を、セリフをなぞって口にする。
キャンドルサービスで手足拘束されちゃ結婚もままならないね。
火をともしたら暖かそうだけど。
溶けてしまう白い蠟より、今の方が心も足もあったかい。
実家で囲んだこたつを思い出す。
寒くてしょうがない冬だけど、誰かと一緒に過ごせば大したことはない。
引っ越す時にこたつを買い足していいかも。
でもやっぱり自分の家は寒いから、こたつのある誰かの家で過ごしたいな。
人に会うのにこたつを理由に使うのはどうなのか、という問いは胸にしまう。
自分の家でこたつを囲む人がいない事実に気付いてしまうから。
じんと爪先が熱くなる。
冷え性の私にはこれくらいがちょうどいい。
頭寒足熱で風邪もひかない。
親戚にも会えたし、心もほっとしてきた。
私は温もりを求めてる、猫のように。
実家の猫は元気だろうか、しばらく会っていないから忘れられているかもしれない。
久しぶりに、仕事が落ち着いたら帰ろうと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます