2日目 星空

彼曰く、冬の夜空に星が踊っている。


 ***


冬空の下、寝巻きにコートを着て外に出る。

星が綺麗に輝く黒い天井。

オリオン、おおいぬ、こいぬ。

冬の大三角のそばでアルデバランが燃えている。

滅多に星の見えない都会の街。

思わぬところで命を燃やす人がいる。

いつもと変わらずゴミ拾いをする清掃業者。

いつもと違う装いで初売りを叫ぶ百貨店員。

早めの大学合格祝いで酒に溺れかける学生。

ここぞとばかりに急ピッチで進むビル工事。

空よりも近い場所で燃やされる命が、天の光よりも煌々と輝いている。

ながらスマホで周りをちっとも見ないから、こんな時くらいしか気づかない。

燃える横を通って全然最寄りじゃないコンビニまで歩いていた。

最寄り駅を超えて、家と反対側の商店街からも離れたファミマ。

ホットスナックは綺麗に片付けられていて、店員も裏にはけて心許ない。

いつでも光っている蛍光灯だけが燃えている。

小腹が空いて、チョコクロワッサンとあったかいコーヒーを買った。

かじかむ手でコーヒーを包んでから、ゆっくりプルタブを引く、ひとくちすする。

「あっち」

思ってたより熱かった。

喉が熱を帯びて燃える。

また、空を見上げる。

「晴れてるなぁ」

セルフレジで会計を済ませるとき、裏から笑い声が聞こえてきた。

見えていないだけで、命を燃やしている人たちはちゃんといるらしい。

天を満たす光が先ほどよりも明るく見えた。

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