25日目 ユニクロという妥協解

彼曰く、すべての服の原型に見える。


 ***


私は服が好き。


好きではあるが、ブランド物はよく知らない。

世界に名を轟かせるブランドバッグをちらつかせるわけでもなく、知る人ぞ知るドメスティックブランドを身に着けているわけでもない。

着れるものを着る、というシンプル思考は、ファッションにおいても変わらない。

普段からなるべく注力されている倹約心は、服を買うときにおいても優先されるらしい。

コンビニに通うのを1か月我慢すればそれなりのものを帰るはずなのに、今日も私はコンビニに行ってユニクロに行く機会を増やしている。

だからといって、これがユニクロ大好きにつながるわけではない。


目的と結果が必ずしもイコールの好意で結びつくとは限らない。

食に対する興味はそれなりに持っている私は、服に対するアンテナ感度が悪い。

どれだけいいなと思う服を見ても、それが私に似合うかどうかについてはわからない。

何より、どの服も「ユニクロにありそう・・・」という感想が生まれてしまうのだ。


今年一番トレンドのボタンの大きなカーディガン。

オーバーサイズのセットアップ。

タートルネックほどではなくとも、首がほのかに詰まったニットセーター。

キャンバス地のどこにでもありそうな黒スニーカー。

多彩な色遣いのソックスやマフラー。


・・・や、どれもなんとなくユニクロにありそうじゃない?


この思考がよぎった瞬間、私のアンテナはぽきりと折れる。

見るものすべてがファーストリテイリングに見えるのだ。

柳井正の術中にハマってしまったということになる。

ファーストフードのように簡単に服が手に入る時代。

着られる服よりも作られる服の方が多い今、わざわざ高い服を着ることに優越感を得るのは経済的に余裕のある人くらい。

生活の一部を犠牲にしてでも服にお金を落とすより、ほかの欲求にお金を費やした方がいい。


そうして堂々巡りした思考の果てにきちんと折りたたまれた服は、いつもユニクロの服なのだ。

シンプルイズベスト。

これこそが君の最適解、そういわんばかりに整然と。

すっと通っていけるような感覚。

まるで高速道路のETC。

何も考えずに素通りする感覚でお金を渡してしまう。


ある意味コンビニみたいなもの。

コンビニによく行く私は、気づけばいつもコンビニでご飯を買っている気がするのはきっと気のせいなんかじゃない。

節約志向しているつもりが、節約できていないのかもしれない。

コンビニだけじゃない、普段の金遣いから疑った方がいい。


そんな心から、ZOZOTOWNという新しい扉を開こうと思う。

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