23日目 昼飲み
彼曰く、昼から飲んで勤労に感謝。
***
勤労感謝の日。
勤労に感謝するのであれば普段働いていない人に勤労していほしいなと思う日々。
主に国会のテレビ中継で寝ている人とか。
あの人たちもカメラの入らないところで仕事をしている可能性もなくはないけど。
でも人に見えないところはなかなか評価されないらしい。
評価基準や昇格目安なんてあるけど、見る人次第だし。
一番いいのは見る人と仲良くなることなんだろうなぁ。
そんなことを思いながら昼からの酒に乾杯する。
付き合ってくれている先輩に感謝。
勤労に感謝するより、普段お世話になっている人にこそ感謝すべきかも。
こんな日に付き合わせてしまって、いや付き合ってもらってありがとうございます。
昼から飲むといえば、先週の土曜にも同じ過ごし方をした。
休日である分、背徳感もあるにはあるけど、昼からの酒を許されるときになったことの方がうれしい。
よく考えたら去年の同じ時期にはこんなことできなかったわけだし。
それより前からずっとお店でお酒なんて飲めなかった。
地ビールにハイボール。
ワインや焼酎なんかもある。
居酒屋万歳、コロナ収束万歳。
実際にはまだ完全に収まっているわけではないけど、前祝いにはちょうどいい。
人類が超えるべき壁、壊すべき限界。
混沌とした世の中を取り囲むようにそびえたつ見えない壁。
「これはぶち壊し甲斐があるね」
目の前に置かれた黒と白の塊。
黒くかたい生地に覆われたチーズの海はこれでもかというほど湯気をはためかせている。
シカゴピザって、こんなにそそる形をしていたんだな。
チーズを伸ばすなんていう体験、最後にしたのはいつだろう。
ずいぶん前、大学の友人と新大久保のあたりを散策した時以来だろうか。
あの時は右も左も韓国色、というか韓国食で満たされていた。
舌の上にカロリーが広がる感触が新鮮だった。
チーズハットグ、これはもう死語なのかな?
全然聞かなくなってしまった。
流行り廃りが激しい日本だけど、外国産のものもその流れには逆らえないらしい。
開国してからの日本の文化吸収力と言ったら列強に脅威を抱かせるほどだったといわれるけど、まさにその風潮を感じざるを得ない。
持ち上げて、ぐにょー--んと伸びる白い糸。
ここには食文化の集大成と人間の欲望のすべてが詰まっている。
自分の背丈よりも高く持ち上げても切れないしぶとさ。
無残にナイフで切ってやるとあっさりとちぎれて、下半分はチーズの海に帰っていく。
目に映る自然の重力が、静かな満足感を脳に伝えてくれる。
果たしてこの見ているだけのこの満足感は、黒い塊と白い欲望、しゅわしゅわと泡立つ金色の本能によって、けだもののように塗りつぶされた。
これができるのも昨日ちゃんと仕事を終わらせたからである。
圧倒的自己満足に、今日も感謝して生きている。
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