11日目 帰る
彼曰く、この距離を歩いて帰る・・・、楽しくなってきたぜ!
***
仕事帰り、暗いアスファルトに落ちる影が一層暗く見える。
そう、今日の私の家路は暗いしつらい。
職場からの道のりが楽しいかは人による。
帰り道にお気に入りのパン屋やレストラン、雑貨屋なんかがあれば楽しいかもしれない。
「今日はご褒美にたっかいパン買って帰ってやる」
「最近ちゃんとしたご飯食べてなかったな・・・、久しぶりに定食ってやつを食べて帰るか・・・」
「もう秋だなー、なんか秋っぽいもの飾りたい。何かいい雑貨入ってないかな」
いろんな想いを抱えて帰り道を歩く時の足取りは軽い。
帰ってからの時間が楽しくなるし、今日からの帰り道さえ楽しくなってくる。
電車に乗ってしまえば家まですぐだし、晴れの日だったら自転車で出かけたりもするので、そういう日は楽しい時間もすぐ終わってしまう。
疲れてすぐ寝てしまうので。
楽しい時間は短い。
そうだとわかっていても、短い憩いの間は時間も忘れてしまうのだから、人間ていうのは本当に単純な生き物だと思う。
忘れるくらいに没頭できるならこの上ない喜びだと思う。
つらい時間が長々と続くよりは全然健全だし、安心できるし。
そんなときほど楽しい時間も恋しくなるんだけど、逆のパターンもある。
つらい時間が長すぎるっていうパターン。
例えば仕事が終わるのが思ったよりも遅くなってしまい、終電を逃した場合。
終バスもないし、会社から近くに住んでいる友人もいない。
そもそも連絡したところで出てくれるかもわからない人たちをあてにはできない。
家までは歩くと1時間半、頑張れば帰れない距離じゃない。
これでも昔は体力測定の時に持久走だけはいい点数だった。
「マラソンの鬼」と呼ばれる同級生と4分の3までは競っていたのだから、十分得意分野と言ってもいいだろう。
ちなみに今日の靴はおろしたての革靴。
店員さんに言われるままに買ったものだからサイズが小さくてかなわない。
この前30分くらい歩いただけで靴擦れが起きてしまった。
「革靴は足になじむので、歩くたびにパカパカしないくらいぴったりの方がいいですよ~」
なるほど、いつになったら私の足になじんでくれるかは教えてくれなかった。
なじむまでの計算式は発表されていないのか?なんと理不尽な靴もあったもんだ。
ガラスの靴がぴったりはまったシンデレラは靴擦れしなかっただろうかなんて、変な思考がよぎる。
・・・いや、これだ!
嫌だなーと思う時間を減らせば、家までのつまらない時間を埋められる!
つらいを楽しいに帰ることができれば、このデスロード、私の勝ちだ!
まるでゲーム攻略みたいだ、楽しくなってきた!
帰宅時間が短い日の私の気持ち、理解できる人は多いはず。
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