7日目 誘い
彼曰く、元気してるか?
***
買い出しからの帰り道。
自分のためだけの買い出しも手慣れたもので、容量が少ないと思っていたカバンに収まるように買うのもうまくなった。
さすがに一人暮らし7年目。
この程度に躓いているようじゃ生きていけないわね。
1週間分の納豆、たまご、お湯を入れるだけで出来上がるスープ。
絶やすことのなくなった2Lの水3本、無性に食べたくなるアイスを2つほど。
これだけあれば家で困ることはない、会社からの帰り道でコンビニに寄るかは私次第。
ふと目に付くお酒コーナー。
めったに飲まない焼酎の横で、ビールやチューハイ缶、梅酒が私に色目を使っているように見える。
でもここでお酒を買うことはない。
お酒はめったに飲まない、飲まなくなってしまった。
「お酒の提供は禁止します」
お酒のせいで感染が広がっているわけではないのに、無理に原因にされて、お酒もかわいそうと思った。
集まる人が良くないとされているだけ、お酒を飲んでも飲まなくてもその基準は同じ。
飲み会の場でしかお酒を飲まないけれど、外食は時々したい私としては残念でしかない。
会社帰りに外食できるようないい身分ではないけど、「営業していない」と聞くだけでこんなにも悲しくなる。
これを機に閉店するお店も少なくないのだから。
行ったことのないお店が閉まってしまうのは残念、残念なことなのだ。
でも縛りは消えた。
喪中明けの遺族のように、欲望のままに生きる人々が街を闊歩する。
夜の街だけでなく、昼の街にも色が戻ってきた気がする。
街によってはそんなに変化はないかもしれない、いつも通りの場所もある。
でもこれは気分の問題、お店がやっているという事実が大事なので。
相変わらず平日に外食を積極的にするつもりはないけど、休日の楽しみが帰ってきたのはうれしいこと。
行きたいお店はたくさんあるのでね。
帰り道、大学時代の友人から連絡がきた。
「生きてる?」
生きてますとも、バカにするでない。
「生きてるよ、ギリギリで」
「相変わらずな」
3年前と変わらない、懐かしい言い回し。
よく考えたら今の言葉遣いもそんなもんだ。
「久しぶりに飲まない?」
「いいね」
前と同じ誘い文句に前と変わらない答え文句。
2021年も終わりが近い、その前に浴びるように酒を飲むのもいいかもしれない。
まずは仕事、頑張らないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます