8日目 白雷

彼曰く、遠く響く白き光、煌々と。


 ***


雨が降った。


夏を残したような日差しの強い日の夕方。

真っ黒に灼けたアスファルトに打ち付ける雫が、ジッと音を立てて沁み込んでいく。

色の淡い道がだんだんと濃く染まり、冷えていく。

穏やかに吹く風が以上に冷たく肌を叩く。

茜に染まるときれいになる秋空、今日は見る影もなく雲に覆われている。

高い空にのしかかる雲は、風に押し負けてどんどんと進んでいく。

淡色の灰かぶりのわりに軽く見えた。


地下にある行きつけのカフェの一つにこもっていた休日。

閉店時間が迫りそろそろ帰ろうと店の入り口に立って5分。

見上げた空は憎く見える。

この空を吹き飛ばす力があったならぜひともそうしたい。

それが私じゃなくてもいいから、誰か吹き飛ばしてくれ。


「またコインランドリーか・・・」


すっかり常連になったランドリースペースでは、終わるまで読書するくらい居なれた場所になってしまった。

自動ドアが開くたびに目に入る監視カメラにお辞儀するのもいつも通り。

もうこのスペース私専用にならないかなって、何度思っただろうか。


足取りの重い帰り道、重い気持ちとは裏腹に何を読もうか楽しみにしている気持ちはどこか晴れやか。

バスの中の時間もちょっとだけ楽しく感じる。

もう少しで最寄りを通り過ぎてしまうところだった。

ボタンを押してバスを降りる。


雨はやんでいたが、遠くで雷の鳴る音が聞こえてきた。

どうやら通り雨だったらしい、空を過ぎていく雲は店先で見た時よりも速い気がする。

物語が終わったときのように、2つの雲の大群が視界の両端から閉じ始める。

白みの残る空に黒い幕が下りていく。


遠くではまだ雷が鳴っている。

白く輝く稲光は遠くからでも力強く、すぐ目の前にある街灯より明るい。


あの向こうにあるのは地獄なのか、希望なのか。

モンハンだったらキリンとか居そうだけど。

いつか白い雷を近くで見てみたい。

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