12日目 『孤狼の血』

彼曰く、極道の世界…、憧れはないわね。


 ***


極道の世界は昔から題材として使われています。


よく使われる題材だけど…、内側は全然見えない。

というより、見たらたぶん人生が終わる気がする。


世界には知らない方がいい場所もあるという。

無知の知、なんてことを哲学者ソクラテスは言ったけれど。

無知を無知のままにしておくのもうまい生き方だと思う。

いわゆる、処世術ってやつ。

生き方がうまい人はまずかかわらない世界だから、知らないのも無理はない。


対抗できるのは国家権力か、裏の支配者の魅力に取りつかれた無法者。

どちらが強者たり得るか。

白黒はっきりさせるというより、二項対立それぞれの生き方を見せていると思う。

他の映画ではコメディな配役をする人が、真っ向から対立しあって殴り合ったり、互いの黒い部分を見せ合って粋がっている。

多分本人たちの言い分だと粋がっているわけではなく、本気なんだろうけど。


どんな手を使ってでも本音を吐かせる。

そこに正義があるのだろうか。

極道という悪を壊すには、警察にも悪はいるらしい。

悪を以て悪を制す。

制すのか征すのか、どっちかといえば後者には感じる。

時々見せる人間らしい感情が、予定調和をぶち壊していくのは、ほかの映画よりもなんだか生々しい。


極道は人間世界の裏の部分と感じる。

人間の理解しづらいところ、内に秘めた激情、怒気、暴力。

欲望と憎悪にまみれた人間模様はただの映画とは違うなぁ。

なんでそう思うのかはわからない、あんまり見たことないからかな?


ときには尊敬する女のために動いたり、悪漢を懲らしめるために正義をふるったり、不都合を取り消すために銃を突きつけたり、金と組織の圧力を担いで殺しを笑う。

綺麗なところなんてない、汚いところしかない。


映画というフィクションだから、なのかもしれないけど、ここには人間の欲望の本性が詰まっている。

悪辣で、嗜虐的で、非情な極道。

対抗するにはそれを超える悪逆が必要らしい。


ドラマでは”マルボウ”なんて言われる一部署だけど、よくこんな世界で生きていこうと思ったなと感心する。

下手したら自分がブタバコに入れられるかもしれんのに、それも覚悟のうえで悪を貫く。


どっちが悪なのか、全然わからん。


映画の冒頭と中盤に出てくるブタが印象的だった。

『極道を生かさず殺さず、飼い殺しにするんがうちらの仕事じゃろうが』

『うちら食われる前に食ろうた方がええんと違うか』

養豚場での大上のその一言が、この世界で生きる彼らの信条の一つだと感じる。


それにしてもエグイ、冒頭からエグイ描写いっぱいだから、軽い気持ちでは見れませんね。

ヤクザに対して軽い気持ちでいるのも、どうかと思いますがね。

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